「この建物、タダであげるよ。そのかわり、ちょっと面倒をみてね」――こういう“条件つきのプレゼント”が負担付贈与。タダであげるはずなのに、あげた側が売主並みの責任を負うこともある。今日の題材は 令和2年(10月)・問9です。
「先輩、ちょっと変わったご相談で」桜井くんが切り出した。「AさんがBさんに甲建物を『タダであげる、そのかわり毎月いくらか負担してね』っていう約束で渡したいそうなんです。これって普通の贈与とは違うんですか?」
「それは負担付贈与だな。ただの贈与(タダであげるだけ)と違って、もらう側に何か“負担”がくっついている。この『負担』があると、ふつうの贈与とは扱いがガラッと変わるんだ」
「変わる、というと?」
「いちばんの急所はここだ。負担付贈与では、あげる側(贈与者A)も、その“負担の限度で”、売主と同じ担保責任を負う」
「えっ、タダであげるのに、売った人と同じ責任……?」
「そう。ふつうの贈与なら『タダであげたんだから、多少の不具合は大目に見てよ』で済む。でも負担付贈与は、もらう側も負担という“対価らしきもの”を払っている。だからその負担に見合う分だけは、売主と同じように責任を持て、という理屈だ。これが令和2年10月問9の正解肢だ」
・贈与者も 負担の限度で売主と同じ担保責任 を負う
・受贈者が 負担を果たさない → 贈与者は解除できる(双務契約のルールを準用)
「じゃあ逆に、もらったBさんが約束の負担をサボったら?」
「いい質問だ。受贈者Bが負担を果たさないときは、贈与者Aは契約を解除できる。負担付贈与には、売買のような双務契約のルールが準用されるからだ。『負担の不履行を理由に解除できることはない』はバツ――ちゃんと解除できる」
「タダであげる話でも、約束を破られたら取り消せる、と」
「そういうことだ。“タダ”だからって贈与者が一方的に弱いわけじゃない」
「先輩、ついでに。口約束(書面なし)で『あげる』と言っただけの贈与って、後からやっぱりやめた、ってできるんですか?」
「できる場面がある。書面によらない贈与は、まだ“履行していない”部分は解除(撤回)できる。気軽な口約束を縛りすぎない、という配慮だ。ただし――不動産なら、引渡し“または”登記、どちらかが済めば、その部分はもう解除できない」
「引渡しと登記、両方そろわないとダメ、じゃないんですね」
「そこがひっかけだ。『引渡しと登記の両方が終わるまで解除できる』はバツ。どちらか一方が済めば、もう“履行した”とみなして解除できなくなる」
「片方でいい、と。あと先輩、これ売買の手付の話も出てくるんですけど――買主が代金を準備して『履行してくれ』と催告してきた後でも、売主は手付の倍返しで解除できますか?」
「できない。相手が“履行に着手”した後は、手付解除はできない。買主が代金を準備して催告=履行の着手だ。『着手後でも倍返しで解除OK』はバツ。――今日は『タダの贈与』と『売買』、両方の引き際を見たな」
「もらう・あげる・売る、それぞれの責任と解除……。整理します」桜井くんは手帳を開いた。
・受贈者が負担を果たさない → 贈与者は解除できる(双務契約の規定を準用)。
・書面によらない贈与:未履行なら解除可。ただし不動産は引渡し又は登記のどちらかで解除不可に。
・売買の手付解除:相手が履行に着手したらもうできない。
この物語の“宅建ポイント”
- 負担付贈与の担保責任:負担付贈与では、贈与者はその負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う(民法551条2項)。これが令和2年10月問9の正解肢。
- 負担不履行による解除:負担付贈与には双務契約に関する規定が準用され、受贈者が負担を履行しないときは贈与者に解除権が発生し得る(民法553条)。「発生することはない」は誤り。
- 書面によらない贈与:書面によらない贈与は履行の終わっていない部分を解除できるが、不動産は引渡し又は所有権移転登記のいずれかがあれば履行が終わったものとされる(民法550条)。「両方終わるまで解除できる」は誤り。
- 手付解除:相手方が契約の履行に着手した後は手付による解除ができない(民法557条1項)。買主の代金準備+催告は履行の着手にあたる。
この話のもとになった問題令和2年(10月)・問9(権利関係/売買・負担付贈与)。「タダでも負担付きなら売主並みの責任」という物語の感覚が、そのまま肢の正誤になります。正解は「負担付贈与の贈与者は負担の限度で売主と同じ担保責任を負う」の肢。
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