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COLUMN / 宅建コラム

妻が住み、子が継ぐ家
― 桜井くんと配偶者居住権

権利関係・配偶者居住権2026年6月28日

夫が亡くなった。家を相続したのは子。でも、残された妻は住む場所を失わない――それが配偶者居住権。「住む権利」と「持つ権利(所有権)」を切り分ける、令和の新しい仕組み。今日の題材は 令和5年・問7です。

― 久保田塾、夕暮れの相談席にて ―

「先輩、相続のご相談で。ご主人のAさんが亡くなって、奥さんのBさんがこれからの住まいを心配されてて」桜井くんが声を落とした。「遺産分割で、家(甲建物)の所有権は子のCさんが相続。でもBさんは『この家にずっと住みたい』と」

「そういうときのための制度がある。配偶者居住権だ。所有権は子C、でも住む権利は妻B――こう切り分ける。Bさんは家を“持って”いなくても、“住み続ける”ことができる」

「持つ人と住む人を、分けられるんですね。じゃあBさんは何歳まで住めるんですか? 遺産分割で期間を決めなかったみたいで」

「期間を定めなかったときは、配偶者の“終身”――つまり一生だ。Bさんは亡くなるまで住んでいい」

「えっ、てっきり『20年』とかキリのいい数字かと」

「そこがひっかけだ。『定めなければ20年』はバツ。配偶者を最後まで守る制度だから、原則は終身。期間を区切りたいなら、別途“○年”と定める必要がある」

― 久保田さんのホワイトボード ―
配偶者居住権 = 「住む権利」(所有権とは別)
所有権 → 子C / 住む権利 → 妻B
存続期間: 定めなければ 終身(一生) ※20年ではない

「先輩、もう一つ。Bさんがいずれ高齢で施設に移るとき、この家を誰かに貸して、その家賃を生活費にあてられますか? Cさんの承諾はいる?」

「いい質問だ。第三者に貸す(使用・収益させる)には、所有者Cの承諾が必要だ。Bさんが自分の判断だけで勝手に貸すことはできない」

「あくまで“住む権利”だから、人に貸すのは別の話、と」

「その通り。『Cの承諾なしで貸せる』はバツ。住むのは自由、でも他人に使わせるなら持ち主の了解がいる。――ここ、“住む”と“貸す”の線引きで狙われる」

「じゃあ、Bさんがこの居住権をちゃんと守るには、何をしておけば?」

登記だ。配偶者居住権は登記しておけば、後から家を買った第三者にも対抗できる。そして大事なのが――所有者Cには、Bに対して“配偶者居住権の設定登記を備えさせる義務”がある

「持ち主のCさんのほうが、登記に協力する“義務”を負うんですか」

「そうだ。Bさんが『登記してください』とお願いしたら、Cは応じなきゃいけない。これが令和5年問7の正解肢だ。賃貸借だと『大家に登記させる義務はない』のが原則だから、そこと混同しないようにな」

「最後に費用の話を。日々のちょっとした修繕とか、固定資産税みたいな“通常の必要費”は、誰が払うんですか。住んでるBさん? 持ち主のCさん?」

通常の必要費は、住んでいる配偶者Bが負担する。タダで一生住めるわけじゃなくて、日常の維持費は使っている人が持つ、という整理だ」

『Cが通常の必要費を負担する』はバツ、ですね。住む人が日常の費用を持つ」桜井くんは手帳を開いた。

「よくまとまった。住む権利は手厚いが、タダでも無制限でもない――そこが今日の芯だ」

― 桜井くんの手帳 ―
・配偶者居住権 → 所有権とは別の「住む権利」。
・存続期間 → 定めなければ終身(20年ではない)。
・第三者に貸す → 所有者の承諾が必要(住むのは自由、貸すのは別)。
・所有者は配偶者に設定登記を備えさせる義務を負う(←正解)。
・通常の必要費 → 配偶者(住む人)が負担。

この物語の“宅建ポイント”

  • 存続期間:遺産分割協議等で期間を定めなかったときは、配偶者の終身の間(民法1030条)。「20年」は誤り。
  • 第三者への使用収益:配偶者居住権者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ第三者に使用・収益させられない(民法1032条3項)。
  • 登記義務:居住建物の所有者は、配偶者に対し配偶者居住権の設定登記を備えさせる義務を負う(民法1031条1項)。これが令和5年問7の正解肢。賃貸借(605条)と違い、所有者側に登記協力義務がある点に注意。
  • 通常の必要費:居住建物の通常の必要費は配偶者が負担する(民法1034条1項)。所有者ではない。

この話のもとになった問題令和5年・問7(権利関係/配偶者居住権)。「住む権利は手厚いが、タダでも無制限でもない」という物語の感覚が、そのまま4つの肢の正誤になります。正解は「所有者は配偶者に設定登記を備えさせる義務がある」の肢。

令和5年を解く →
※本コラムは学習用の読み物です。条文・判例の解釈は改正等により変わることがあります。実務・受験にあたっては最新の法令・公式情報をご確認ください。