「ハンコ一つ」で人生が変わる――保証は、宅建のなかでも一番こわい論点かもしれません。今日の題材は 令和7年・問2。賃貸の連帯保証に潜む、個人根保証の落とし穴です。
「先輩、友達に頼まれちゃって。アパート借りるから、連帯保証人になってくれって」
久保田さんの目つきが変わった。「桜井、その契約書、よく見ろ。お前が保証するのは『家賃だけ』か、それとも『借主の“一切の債務”』か」
「ええと……『賃貸借契約に基づく一切の債務』って書いてあります」
「それは危険な言葉だ。家賃だけじゃない。部屋を壊した賠償、滞納、原状回復……将来ふくらむかもしれない“いろいろな債務”をまとめて保証する。これを個人根保証という」
「うわ、青天井ってことですか……?」
「そこで法律が、保証人を守るためにブレーキをかけた。個人根保証契約は、“極度額”――いくらまで保証するかという上限額を定めなければ、無効になる(民法465条の2)。上限のない丸腰の連帯保証から、保証人を守る仕組みだ」
「じゃあ、極度額が書いてなければ、僕は保証しなくていい?」
「その個人根保証契約自体が無効だからな。……ちなみに、もし契約書が口頭の約束だけだったら?」
「口約束だから、セーフ……?」
「逆だ。保証契約は、書面(又は電磁的記録)でしなければ効力を生じない。口頭はそもそも無効。“軽い気持ち”を防ぐために、書面を要求しているんだ」
桜井くんはゴクリと唾を飲んだ。「先輩、もう一つだけ。もし請求が来たら、『まず本人(借主)に請求してよ』って言えますよね?」
「それが――連帯保証だと、言えない」久保田さんは首を振った。「普通の保証人なら『まず主たる債務者に請求しろ(催告の抗弁)』『先に本人の財産を差し押さえろ(検索の抗弁)』と主張できる。だが連帯保証人には、この2つの抗弁がない。いきなり全額、自分に来る」
「こわっ……。連帯保証、軽い気持ちで判子押しちゃダメですね」
「ただし、守られる場面もある。頼まれて(委託を受けて)保証した人は、債権者に『本人、ちゃんと払ってる?』と履行状況の情報提供を求めることができる。債権者は守秘義務を理由に拒めない。情報がもらえるだけ、まだ救いはある」
桜井くんは手帳を開いた。
・保証契約は書面が必要(口頭は無効)。
・連帯保証人には、催告・検索の抗弁が“ない”。
・委託を受けた保証人は、履行状況の情報をもらえる。
この物語の“宅建ポイント”
- 個人根保証契約(一定の範囲の不特定の債務を保証)は、極度額を定めなければ無効(民法465条の2)。特定の債務の保証では極度額は不要(=令和7年問2の正解)。
- 保証契約は書面(又は電磁的記録)でしなければ効力を生じない。口頭では無効。
- 連帯保証人には、催告の抗弁・検索の抗弁がない。
- 委託を受けた保証人から請求があれば、債権者は主たる債務の履行状況に関する情報を提供しなければならない。
この話のもとになった問題令和7年・問2(権利関係/保証・連帯保証)。物語の山場(一切の債務の個人根保証は極度額がないと無効)が、肢3の正解です。
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