宅建・権利関係の“最終ボス”のひとつ、法定地上権。なかでも今日は、多くの受験生が膝から崩れ落ちる難所――平成30年・問6 の肢3「共同抵当と、建物の建て替え」に挑みます。
「先輩、もうダメです。法定地上権の、この肢だけ意味がわかりません……」
久保田さんはホワイトボードに、ざっと図を描いた。「いいか、まず基本から。土地と建物が同じ人のもので、土地に抵当権がついた。競売で土地と建物の持ち主がバラバラになると、建物が立ち退きを迫られかねない。それは気の毒だから、建物のために法定地上権という“土地を使う権利”が自動で発生する。ここまではいいな?」
「はい、そこは大丈夫です」
「問題は肢3だ。今度は土地“と”建物の両方に、銀行のために抵当権がついている。これを共同抵当という。さて――この銀行は、いくらのつもりでお金を貸したと思う?」
「えーと……土地と建物、両方の価値、ですよね」
「そうだ。しかも建物が“地上権の負担なし”で土地に建っている、その満額の土地の価値も当てにしている。ところが――持ち主が、古い建物を取り壊して、新しい建物を建て直した」
「建物が、入れ替わった……」
「ここで桜井。もし、その新しい建物のために法定地上権を認めてやったら、どうなる?」
桜井くんはハッとした。「土地が……“地上権の負担つきの、安い土地”になっちゃう。銀行が当てにしてた価値が、ガクッと落ちる!」
「ご名答」久保田さんはペンを置いた。「だから判例はこう考える。土地と建物に共同抵当を設定したあと、建物を取り壊して再築した場合、特段の事情がない限り、新しい建物のために法定地上権は成立しない。銀行(抵当権者)が見込んだ“全体の価値”を守るためだ。これを全体価値考慮説という」
新しい建物に法定地上権は……成立しない(原則)
理由:抵当権者は“地上権の負担なしの土地”の価値も担保にしていたから。
「逆に言えば」と久保田さんは付け加えた。「再築した新しい建物にも、銀行が土地と同じ順位で抵当権を付け直したような“特段の事情”があれば、銀行は損をしないから、その場合は法定地上権が成立する余地もある。だが原則は“成立しない”。ここを押さえろ」
桜井くんは、ふうっと長い息を吐いて、手帳に書き込んだ。
・新建物の法定地上権は、原則“成立しない”。
・理由は、銀行(抵当権者)の見込んだ“全体価値”を守るため。
「先輩……法定地上権って、結局“誰が損するか”で考えるんですね」
「いいところに気づいた。法定地上権は、暗記より“誰の期待を守る制度か”で考える。それが解けるコツだ」
この物語の“宅建ポイント”
- 法定地上権の基本:抵当権設定時に土地と建物が同一所有者で、競売で別人になる場合、建物のために土地を使う権利が自動で生じる。
- 肢3の難所:土地と建物に共同抵当を設定後、建物を取り壊して再築した場合、特段の事情がない限り、新建物のために法定地上権は成立しない(全体価値考慮説)。
- 理由:抵当権者は“地上権の負担のない土地”の価値も担保にしており、安易に法定地上権を認めると抵当権者が害されるから。
- (参考)平成30年・問6の正解は肢1。建物の登記名義が前所有者のままでも、法定地上権は成立する(=肢1が誤り)。
この話のもとになった問題平成30年・問6(権利関係/法定地上権)。物語で扱ったのは“最難関”の肢3(共同抵当と再築)。本問の正解そのものは肢1です。年度別演習で全肢に挑戦を。
平成30年を解く →