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COLUMN / 宅建コラム

台風の夜の、おせっかい
― 桜井くんと事務管理

権利関係・事務管理2026年6月28日

頼まれてもいないのに、他人のために動く。世の中ではそれを「親切」と呼びますが、法律ではちょっと違う名前が付きます。事務管理――今日の題材は 平成30年・問5 です。

― 台風一過の翌朝、久保田塾の自習室にて ―

「先輩、うちの隣のおじさん、すごいんですよ」

桜井くんが興奮ぎみに言った。「昨日の台風の夜、隣の家が留守だったんですけど、屋根が壊れかけてて。このままじゃ家がめちゃくちゃになる、ってことで、おじさんが頼まれてもないのに、雨のなか屋根を直したんです。いい人ですよね! ……で、これってお礼、もらえるんですか?」

久保田さんは湯気の立つカップを置いた。「それはな、法律でいう事務管理だ。頼まれていないのに、他人のために事務を処理すること。で、結論から言うと――原則、お礼(報酬)は請求できない

「ええっ、タダ働き!?」

「事務管理は“善意の助け合い”が前提だからな。特段の事情がなければ、報酬は出ない」

桜井くんは食い下がった。「じゃ、じゃあ責任は? もし雑に直して、あとで雨漏りしたら、おじさんが賠償させられるんですか? 善かれと思ってやったのに」

「いい質問だ」と久保田さんは指を立てた。「普通の事務管理なら、善良な管理者の注意――いわゆる善管注意義務で、ていねいにやる必要がある。だが今回は“台風で甚大な被害が差し迫っていた”。これは緊急事務管理だ」

「きんきゅう、じむかんり……」

「急迫の危害を避けるために行った事務管理では、管理者は、悪意か重大な過失がなければ、損害賠償の責任を負わない。つまり、善管注意義務までは要求されない。火事場で人を助けて、多少手荒になっても責められない――そういう発想だ」

「なるほど……! じゃあ、屋根を直すのに買った材料費とかは? それも自腹ですか?」

「そこは大丈夫だ。本人の意思に反していなければ、支出した“有益な費用”は全額、償還を請求できる。報酬はゼロでも、立て替えた費用は返してもらえる」

桜井くんは大きくうなずいた。「お礼は出ないけど、ヘンに責任は負わされないし、立て替え分は戻る……。よくできてますね」

「人の善意を、ちゃんと“ほどよく”守る制度なんだよ」と久保田さんは微笑んだ。

― 桜井くんの手帳 ―
・事務管理は、原則タダ(報酬なし)。
・でも緊急時は、悪意・重過失がなければ責任なし。
・立て替えた有益費は、全額返してもらえる。

この物語の“宅建ポイント”

  • 事務管理は原則“無償”。特段の事情がなければ報酬を請求できない。
  • 急迫の危害を避けるための緊急事務管理では、悪意・重過失がなければ損害賠償責任を負わない(善管注意義務までは負わない)。
  • 本人の意思に反しなければ、支出した有益費は全額償還を請求できる。
  • 管理者は、本人の請求があればいつでも事務処理の状況を報告しなければならない。

この話のもとになった問題平成30年・問5(権利関係/事務管理)。物語のポイントが各肢に出題され、肢3(緊急事務管理なのに“善管注意義務を負う”とする点)が誤り=正解です。

平成30年を解く →
※本コラムは学習用の読み物です。条文・判例の解釈は改正等により変わることがあります。実務・受験にあたっては最新の法令・公式情報をご確認ください。