家賃を滞納する借主。大家からすれば「鍵を替えて締め出したい」「荷物を運び出したい」――気持ちは分かる。でも法律は、それを原則として禁じています。自分の権利でも、力ずくで実現してはいけない。今日の題材は 令和3年(12月)・問1です。
「先輩、さっきの大家さん、かなり怒ってましたね」桜井くんがため息をついた。「『うちの借主、もう何か月も家賃を払わない。勝手に鍵を交換して締め出して、荷物も外に出していいか』って」
「気持ちは痛いほど分かる。だが――それはやっちゃいけない。“自力救済”といって、原則として法が禁じている」
「えっ、貸してるのは大家さんなのに? 家賃も踏み倒されてるのに?」
「そうだ。たとえ自分が正しくても、力ずくで権利を実現するのは禁止。鍵を替えて締め出す、荷物を勝手に運び出す――どれも自力救済で、原則アウトだ」
「じゃあ大家さんは、泣き寝入り……?」
「いや。ちゃんと“裁判という手続”を踏め、ということだ。明渡しを求める裁判をして、判決をもらって、強制執行する。手間でも、それが筋。『自分の手で解決』はダメ、『法の手続で解決』が原則なんだ」
・鍵・シリンダーを替えて締め出す → ×
・残置物(家財)を勝手に運び出す → ×
・「家賃を1年滞納されたから」でも → ×
権利の実現は 裁判の手続 で
「でも先輩、本当に“絶対に”ダメなんですか? 例えば、目の前で物が壊されそう、みたいな緊急のときでも?」
「そこだ。例外はある。判例はこう言っている――裁判の手続を待っていたのでは権利の侵害を防げない『緊急やむを得ない特別の事情』があるときに限り、必要な限度を超えない範囲で、例外的に許される」
「あくまで“例外”で、ハードルがすごく高いんですね」
「その通り。『事情のいかんにかかわらず、必要な範囲なら自力救済OK』はバツ。許されるのは“緊急やむを得ない特別の事情”があるときだけ。――この例外をきちんと書いた肢が、令和3年12月問1の正解だ」
「家賃の滞納は、どんなに長くても“緊急やむを得ない特別の事情”には普通あたらない、と」
「よく分かってる。滞納が1年でも、鍵交換による締め出しは許されない。原則は禁止、例外は極めて限定的――そこが今日の芯だ」
「大家さんには、ちゃんと法的手続をご案内します」桜井くんは手帳を開いた。
・鍵交換で締め出す/残置物を勝手に撤去 → ×(家賃を長期滞納されていても×)。
・権利の実現は裁判(法の手続)で行うのが原則。
・例外=緊急やむを得ない特別の事情があるときだけ、必要な限度で許される(ハードルは高い)。
この物語の“宅建ポイント”
- 自力救済の原則禁止:私力(自力)の行使は原則として法の禁止するところ。権利があっても、裁判等の法的手続によらず力ずくで実現することはできない。
- 賃貸の現場でも同じ:家賃の長期滞納があっても、大家が裁判によらず鍵・シリンダーを交換して締め出したり、残置物を勝手に撤去することは原則できない。
- 例外(判例):法律に定める手続によったのでは権利侵害に対抗して現状を維持することが不可能・著しく困難な「緊急やむを得ない特別の事情」がある場合に限り、必要の限度を超えない範囲で例外的に許される。これが令和3年12月問1の正解肢。
- 「事情のいかんにかかわらず必要な範囲なら許される」とする肢は、例外の限定を外しているので誤り。
この話のもとになった問題令和3年(12月)・問1(権利関係/自力救済)。「原則禁止・例外は緊急やむを得ない特別の事情のときだけ」という物語の線引きが、そのまま4つの肢の正誤になります。正解は、例外を正確に述べた肢。
令和3年(12月)を解く →