買う気まんまんのお客さん。売主も乗り気。営業なら「今週中に契約しましょう!」と言いたくなる場面です。でもその土地が監視区域だったら――その一言が、違反への第一歩。今日の題材は 令和6年・問22。
「先輩、例の2,500㎡の土地、話がまとまりました! 買主さんも売主さんも乗り気で、今週中に契約しちゃおうかと」
「市街化区域内だったな。ちょっと待て、その土地――監視区域じゃなかったか?」
「あ、はい、監視区域です。でも国土法って、契約したあと2週間以内に届出すればいいんですよね? だから先に契約しちゃって……」
「止まれ」久保田さんの声が鋭くなった。「それは“事後”届出の話だ。監視区域は“事前”届出だぞ」
「事前……。えっと、契約する前に出す、ってことですか」
「そうだ。しかも出せばすぐ契約できるわけじゃない。届け出てから6週間は、契約を締結してはいけない。裏を返せば、契約締結の少なくとも6週間前までに事前届出をしておかないといけない」
「6週間!? 今週中どころか、1か月半も先じゃないですか……」
「そういう区域なんだ。監視区域は、地価が急に上がりそうな場所を都道府県が指定して、取引にブレーキをかけている。だから『契約してから報告』では意味がない。契約する前に見せろ、というのが事前届出だ」
「僕、今週中に契約しますって、もうお客さんに言っちゃいました……」
「まだ契約してないなら間に合う。今すぐ当事者双方で事前届出だ。スケジュールを引き直して、正直に説明しろ。契約を急いで違反するより、6週間待つほうが100倍マシだ」
「……あの、もし届出せずに契約しちゃってたら、どうなってたんですか? 勧告されるだけ、ですよね?」
「甘い」久保田さんはぴしゃりと言った。「届出を怠れば、勧告とは別に罰則の適用もあり得る。『勧告されるだけで罰則はない』――これも試験で狙われる誤りの肢だ」
「罰則……。危なかった」
「ついでに、面積の基準も入れておけ。事後届出が必要になるのは、市街化区域なら2,000㎡以上、市街化区域以外の都市計画区域なら5,000㎡以上、都市計画区域外なら10,000㎡以上だ」
「じゃあ、市街化区域以外の都市計画区域で4,000㎡だったら?」
「届出不要。5,000㎡に届いていない。たとえ地上権の設定みたいに届出の対象になる契約でも、面積が足りなければそもそも届出はいらない」
「なるほど。じゃあ交換は? お金が動かないなら、関係ないですよね」
「そこも引っかけだ。交換も『土地売買等の契約』として届出の対象になる。金銭の授受がなくても、土地と土地を渡し合っている以上、対価性があるからな。しかも判断は“取得する側の面積”で見る」
「取得する側で……。えっと、市街化区域の3,000㎡と、区域外の12,000㎡を交換したら」
「3,000㎡を取得する側は市街化区域で2,000㎡以上。12,000㎡を取得する側は区域外で10,000㎡以上。――どうなる?」
「両方とも届出が必要だ……! 『お金が動かないから両方不要』って思い込んでました」
「その思い込みが、そのまま誤りの肢になっている。よく覚えておけ」
市街化区域 2,000㎡以上/市街化区域以外の都計区域 5,000㎡以上/区域外 10,000㎡以上
※交換も対象(金銭授受がなくても対価性あり)。判断は取得する側の面積
事前届出(監視区域・法27条の7)… 契約の前に・当事者双方が届出
契約締結の少なくとも6週間前までに届出(届出後6週間は契約できない)
届出を怠ると … 勧告 + 罰則もあり得る(「罰則なし」は誤り)
桜井くんは、契約書のドラフトを閉じて手帳を開いた。
・「今週中に契約しましょう」は、監視区域では言ってはいけない。
・事後届出の面積:市街化2,000/それ以外の都計区域5,000/区域外10,000(㎡以上)。
・交換もお金が動かなくても届出対象。判断は“取得する側”の面積。
・届出を怠れば勧告だけでなく罰則も。
この物語の“宅建ポイント”
- 監視区域の事前届出(法27条の7):監視区域内の土地について売買契約を締結しようとする当事者は、契約締結の少なくとも6週間前までに事前届出を行わなければならない。市街化区域内2,500㎡は対象面積を満たす。
- 事後届出の面積要件(法23条2項):市街化区域2,000㎡以上/市街化区域以外の都市計画区域5,000㎡以上/都市計画区域外10,000㎡以上。市街化区域以外の都市計画区域内の4,000㎡は基準に達せず届出不要(地上権の設定でも同じ)。
- 交換契約:金銭の授受を伴わない交換も対価性のある「土地売買等の契約」として届出対象。取得面積で判断するため、双方が基準以上なら双方に届出が必要。
- 罰則:所定の届出をしなかった者には、勧告とは別に罰則が科され得る(法47条)。「罰則の適用を受けることはない」は誤り。
- 令和6年・問22は「正しいもの」を選ぶ問題。正しい肢=監視区域内は契約締結の少なくとも6週間前までに事前届出、です。
この話のもとになった問題令和6年・問22(法令上の制限/国土利用計画法)。「事後は2週間以内、監視区域は6週間前まで」――この時間感覚が、そのまま正解につながります。
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