1つの土地を、4人で持っている。3人はすぐ連絡がつくのに、4人目はどこにいるか分からない。そんな土地、動かせるの?――今日の題材は 令和6年・問3。共有の「誰の同意がいるか」を、仲介の現場で見ていきます。
「先輩、ちょっと困った案件で……」桜井くんが資料を抱えてやってきた。「甲土地を資材置場として3年借りたいってお客さん(Fさん)がいるんです。でも、その土地――持ち主が4人いて」
「共有地か。よくある話だ。A・B・C・Dの4人で、持分はそれぞれ4分の1、ってところか?」
「はい、まさに。で、問題は……4人目のDさんが、どこにいるか分からないんです。A・B・Cさんは連絡つくんですけど」
「なるほど。じゃあ整理しよう。共有地で何かするとき、必要な同意は“やることの重さ”で3段階に変わる。ここが今日の急所だ」
① 変更(重大): 共有者 全員 の同意
② 管理: 持分価格の 過半数
③ 保存: 各共有者が 単独 でOK
「軽いことほど、少ない同意でできる、ってことですか」
「そうだ。重いほど、たくさんの同意がいる。一番重いのが①の変更。たとえば土地を造成して形を大きく変えるような――『形状や効用を著しく変える』重大な変更だ。これは 共有者“全員”の同意がいる。3人賛成でも、1人欠けたらダメだ」
「あ、それ、ひっかけで見ました。『重大な変更は過半数でいい』って書いてあるやつ……」
「典型的なバツだな。重大変更は過半数じゃ足りない、全員だ。ここを過半数とすり替えてくるのが、出題者の常套手段だ」
「じゃあ②の管理って、どこまでですか?」
「日常的に“どう使うか”を決めるのが管理だ。そして――今回のFさんへの賃貸が、まさにこれだ」
「えっ、貸すのは管理なんですか。けっこう重大な気が……」
「短い賃貸借なら管理だ。線引きがあってな。土地なら5年以内、建物なら3年以内――この“短期賃貸借”の範囲なら、管理行為として持分の過半数で決められる。Fさんは資材置場で3年。建物を建てるわけじゃない土地の利用で、しかも5年以内。バッチリ管理の範囲だ」
「持分の過半数……。A・B・Cさんで3人。4分の3ですよね。これって――」
「過半数を超えている。だからDさんが見つからなくても、A・B・Cの3人の同意でFさんに貸せる。君の案件、進められるぞ」
「よかった……! Dさん探して土下座か、と思ってました」
「ついでに③の保存も押さえておけ。みんなのためになる現状維持は、1人で勝手にやっていい。たとえば、本当は誰の物でもないのに勝手に登記名義人になってる赤の他人がいたら、そのでたらめな登記を消せと請求する――これは保存行為だ。共有者の誰か1人が単独でできる。わざわざ他の人の同意を取る必要はない」
「みんなの権利を守る“おそうじ”だから、1人でOK、と」
「いい覚え方だ」
「先輩、ちなみに……Dさんが永遠に見つからなかったら、その持分ってどうなるんですか。ずっと4人共有のまま?」
「いい質問だ。実は令和の改正で、行方不明の共有者がいても前に進める制度ができた。所在等不明共有者の持分取得といってな。裁判所に請求すれば、Dの持分をAが取得する、という決定を出してもらえる」
「おお、塩漬けにならずに済むんですね。じゃあDさんは泣き寝入り?」
「いや、そこは公平にできてる。Dは、自分の持分の“時価相当額”をAに払えと請求できる。お金で清算されるわけだ」
「なるほど。あ、でもこれもひっかけで見たな……『決定から3年以内に限り請求できる』って」
「それがバツだ。“3年以内に限り”なんて期間制限はない。もっともらしい数字をくっつけて、正しい肢に見せかけてくる。条文にない期限を勝手に足すのも、出題者の手口だと覚えておけ」
「数字が出てきたら、まず疑え、ですね」桜井くんは手帳を開いた。
・管理(短期賃貸借=土地5年・建物3年 以内)→ 持分の過半数。
・保存(無権利者の登記抹消など)→ 各自単独でOK。
・所在不明の共有者 → 裁判所の決定でその持分を取得できる。不明者は時価相当額を請求できる(“3年以内に限り”の期限は無い)。
この物語の“宅建ポイント”
- 変更(重大)=全員:形状又は効用の著しい変更(重大変更)には共有者全員の同意が必要(民法251条1項)。「過半数でよい」は誤り。
- 保存=単独:無権利者名義の登記の抹消請求は妨害排除=保存行為で、各共有者が単独でできる(民法252条5項参照)。「他の共有者の同意が必要」は誤り。
- 管理=過半数:建物所有目的でない土地を5年以内で貸す短期賃貸借(民法602条)は管理行為。持分価格の過半数で決せられる(民法252条1項)。A・B・Cで4分の3=過半数を満たし、所在不明のDがいても賃貸できる。
- 所在等不明共有者の持分取得(民法262条の2):裁判所の決定で不明共有者の持分を他の共有者が取得できる。不明共有者は時価相当額の支払を請求できるが、「決定から3年以内に限り」という期間制限はない。
この話のもとになった問題令和6年・問3(権利関係/共有)。物語の「全員・過半数・単独」の線引きと、所在不明共有者の制度が、そのまま4つの肢の正誤につながります。正解は「A・B・Cの同意で3年の賃貸ができる」の肢。
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