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COLUMN / 宅建コラム

未成年の取締役が、専任取引士?
― 桜井くんとみなし規定

宅建業法・専任取引士2026年7月4日

今日は数字も判例も出てきません。でも、受験生が一度は「あれ?」となる論点です。題材は 宅建業法31条の3――専任の宅地建物取引士の設置と、その“みなし規定”。人の肩書きひとつで、結論がくるっと変わります。

― ある不動産会社の、新支店オープン準備中 ―

「先輩、うちの新しい支店、専任の取引士を誰にするかで揉めてるみたいですね」

桜井くんが組織図をのぞき込む。久保田さんはうなずいた。

「事務所には、業務に従事する者5人に1人以上の割合で、成年者である専任の宅地建物取引士を置かなきゃならない。これは31条の3第1項。で、誰を“専任”にカウントするかって話だ」

「支店長になるXさん、取引士持ってますよね。支店長=政令で定める使用人だから、その地位につけば自動で専任取引士にカウントされるんじゃ?」

久保田さんは、ゆっくり首を横に振った。

「そこがひっかけだ。“自動でみなされる”のは、業者本人か、法人の役員だけ。政令で定める使用人は、そのみなし規定の対象に入っていないんだ」

「え、支店長なのに?」

「31条の3第2項をよく読むとな。『宅建業者(法人ならその役員)が取引士であるときは、自ら主として業務に従事する事務所について、成年者である専任の取引士とみなす』――と書いてある。ここに“政令で定める使用人”の文字は無い」

桜井くんが組織図の別のマスを指す。

「じゃあ、こっちの取締役のYさん。取引士持ちで、この支店に主に詰めるそうです。Yさんは?」

「Yさんはビンゴだ。役員で取引士なら、主として勤務するその事務所については専任取引士とみなされる。だから支店の設置人数に、そのまま1人として数えられる」

「肩書きが“役員”か“使用人”かで、扱いが真逆になるんですね……」

「そういうこと。で、ここからが本番だ」

久保田さんは、もう一枚の履歴書を机に置いた。名前はZ。年齢の欄を見て、桜井くんが目を丸くする。

「え、Zさん……まだ未成年じゃないですか。でも取引士登録はある、と。……あ、でも専任取引士って『成年者である専任』ですよね。未成年じゃ数えられないんじゃ?」

「普通ならな。未成年の取引士は、原則“成年者である専任取引士”にはなれない。ところが――」

久保田さんは指を一本立てた。

そのZが、業者本人か、法人の役員だったら話は別。さっきの31条の3第2項のみなし規定で、未成年であっても“成年者である専任の宅地建物取引士”とみなされる。つまりZが取締役なら、未成年でも一人の専任取引士として堂々とカウントできる」

「未成年の取締役が、成年の専任取引士……。肩書きが、年齢まで飛び越えるのか……」

桜井くんは、最後にひとつ食い下がった。

「じゃあ結局、政令で定める使用人のXさんは、取引士を持っていても専任取引士には“なれない”ってことですか? なんか、かわいそうですね」

久保田さんは、ふっと笑った。

「いや、そこは誤解するな。“自動でみなされない”だけで、“なれない”わけじゃない。Xさんが、その事務所に常勤で・専任で・実際に取引士として就いていれば、ちゃんと専任取引士として数えられる。現に、小さな事務所じゃ支店長が専任取引士を兼ねているのが普通だ」

「あ……“みなされる”のと、“実際になれる”のは、別の話なんだ」

「そこだ、桜井。役員は『地位そのもの』で自動的にみなされる。政令で定める使用人は『実際の勤務実態』で専任取引士になる。ルートが違うだけで、どっちも道はある。混ぜるな、っていう試験の意地悪だよ」

桜井くんは手帳を開き、大きく三行、書きつけた。

― 桜井くんの手帳 ―
・みなしで“自動カウント”は、本人と役員だけ。
・役員なら、未成年でも成年の専任取引士。
・政令使用人は、実際に専任で就けばOK(自動ではない)。

新支店の窓に、まだ値札のついた「宅地建物取引業者票」が、朝日を受けて光っていた。

この物語の“宅建ポイント”

  • 専任取引士の設置義務(31条の3第1項)。事務所等ごとに、業務に従事する者5人に1人以上の割合で、成年者である専任の宅地建物取引士を置く。
  • みなし規定(31条の3第2項)。業者本人(法人ならその役員)が取引士であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所等について、成年者である専任の宅地建物取引士とみなされる。
  • 未成年者の特例。未成年の取引士でも、業者本人・役員であれば、上のみなし規定により「成年者である専任の取引士」とみなされる。
  • 政令で定める使用人は、このみなし規定の対象外。ただし、実際に常勤・専任でその事務所に就いていれば、専任取引士として数えられる(“自動でみなされない”だけで、“なれない”わけではない)。

この論点を、○×で叩き込む専任取引士の設置と“みなし規定”は、宅建業法で毎年のように顔を出す定番。役員・政令使用人・未成年者の扱いを、業法の論点別1問1答でテンポよく固めましょう。

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※本コラムは学習用の読み物です。設置基準・要件は法改正により変わることがあります。実務・受験にあたっては最新の宅地建物取引業法をご確認ください。