「隣の木の枝が、うちの敷地に伸びてきた。切っていい?」――誰もが一度は思う疑問。原則は「相手に切らせる」。でも令和の改正で、自分で切れる道もできました。今日の題材は 令和5年・問2。お隣さんとの“境界線”をめぐるルールです。
「先輩、お客さんから生活相談みたいなのが来ちゃって」桜井くんが苦笑いした。「『隣の家の木の枝が、うちの庭に越境してきた。邪魔だから勝手に切っていいか』って」
「あるある相談だな。宅建の知識がそのまま役に立つぞ。まず原則を言うと――枝は、勝手に切ってはいけない」
「えっ、うちの敷地に入ってきてるのに?」
「そうだ。越境してきた“枝”は、相手(隣地の所有者)に切らせるのが原則。木は相手の物だからな。勝手にバッサリやるとトラブルになる。――ただし、ここからが令和の改正だ」
「改正……。なんか緩くなったんですか?」
「相手に『枝を切ってください』と催告したのに、相当の期間内に切ってくれないときは、こっちが自分で切ってもいいことになった。ずっと放置されて泣き寝入り、を防ぐためだ」
「なるほど! まず『切って』とお願いして、待っても切らなければ自分で切る、と」
「そういう順番だ。いきなりは切れない、でも催告して待てば切れる。――ちなみに『根』が越境してきたときは、催告なしで最初から自分で切っていい。枝はワンクッション、根はそのまま。ここ、対比で狙われるぞ」
「枝は気をつかうけど、根は遠慮なし、と」桜井くんがメモを取る。
枝: 原則は相手に切らせる → 催告しても相当期間内に切らなければ自分で切れる
根: 最初から自分で切ってよい
「ところで先輩、この問題、他の肢も相隣関係ですよね。境界の測量で隣の土地に立ち入るのって、できるんでしたっけ」
「いい流れだ。境界標の調査や測量などのために必要な範囲で、隣地を使用できる。これも改正で整理された。ただし――“住家”に立ち入るには、居住者の承諾が必要だ」
「住んでる家の中までは、勝手に入れない」
「そうだ。土地(隣地)には必要な範囲で入れても、人が住んでいる家の中は別格。プライバシーがあるからな。『住家でも承諾なしで入れる』はバツ。逆に『住家は承諾が必要』が正しい――実はこれが、令和5年問2の正解肢だ」
「あと、お客さんがこうも言ってて。『隣との境にある共有のブロック塀、もっと高くしたい。隣の承諾いる?』って」
「それはな、相隣者の一人が、共有する障壁の高さを増すのは、単独でできる。承諾は要らない。自分の負担で積み増す分にはOKなんだ」
「あれ、共有なのに承諾いらないんですか。意外」
「そこがひっかけポイントだ。『承諾を得なければならない』と書いてあったらバツ。高さを増すのは単独でできる」
「最後にもう一個。公道に出られない土地(袋地)の所有者は、周りの土地を通って公道に出られますよね。どこを通ってもいいんですか?」
「通行権はある。それが囲繞地通行権だ。だが――通る場所・方法は“他の土地のために損害が最も少ない”ものを選ばなきゃいけない。自由に好きなルートを選べるわけじゃない」
「自分が楽な道、じゃなくて、相手に迷惑が一番少ない道、と」
「その通り。『自由に選んで通行できる』はバツ。通れるけど、ルートには遠慮がいる。――今日のテーマ、全部『お隣さんとの折り合い』だっただろう」
「ほんとだ。権利はあるけど、相手への配慮とセット、ですね」桜井くんは手帳を開いた。
・越境した根 → 最初から自分で切ってよい。
・隣地使用 → 測量等で必要な範囲なら使える。ただし住家は居住者の承諾が必要。
・共有の障壁の高さを増す → 単独でできる(承諾不要)。
・囲繞地通行権 → 通れるが、損害が最も少ない場所・方法を選ぶ(自由には選べない)。
この物語の“宅建ポイント”
- 隣地使用と住家:境界標の調査・測量等のため必要な範囲で隣地を使用できるが、住家に立ち入るには居住者の承諾が必要(民法209条1項但書)。これが令和5年問2の正解肢。
- 越境した枝:原則は竹木の所有者に切除させるが、催告しても相当の期間内に切除しないときは自ら切り取れる(民法233条3項。令和の改正)。「自ら切り取れない」は誤り。
- 共有障壁:相隣者の一人は、共有する障壁の高さを単独で増すことができる(民法231条)。承諾は不要。
- 囲繞地通行権:通行の場所・方法は、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない(民法211条)。「自由に選んで通行できる」は誤り。
この話のもとになった問題令和5年・問2(権利関係/相隣関係)。「権利はあるが相手への配慮とセット」という物語の感覚が、そのまま4つの肢の正誤につながります。正解は「隣地を使用できる場合でも、住家には居住者の承諾がなければ立ち入れない」の肢。
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