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COLUMN / 宅建コラム

預かったコート、借金のカタにできる?
― 桜井くんと留置権

権利関係・担保物権2026年6月28日

「貸した金を返すまで、これは返さない!」――その“人質作戦”、法律で認められる場合と、認められない場合があります。今日の題材は 令和7年・問4。担保物権の入口、留置権のお話です。

― 久保田塾の自習室にて ―

「先輩、ちょっとモヤッとする話があって」桜井くんが切り出した。「Bさんが、Aさんから物を預かってるとします。一方で、Aさんは別件でBさんに1,000万円の借金があって、返さない。Bさんがこう言うんです。『じゃあ、この預かってる物、借金を返すまで返さないからな!』――これって、アリですか?」

「いい題材だ」久保田さんはうなずいた。「それは留置権の話だな。他人の物を持っている人が、『この物について生じた債権を払ってくれるまで、返さないぞ』と留め置ける権利だ。……だが、結論から言うと、その作戦は通らない

「えっ、現に物を持ってるのに?」

「ポイントは“その物に関して生じた債権”でなければならない、という点だ。これを牽連性(けんれんせい)という。たとえば、預かった時計を“修理した”その修理代金なら、時計と債権がちゃんと結びついている。だから『修理代を払うまで時計は渡さない』はOKだ」

「なるほど、“その物について”の借りなら、人質にできる」

「そうだ。ところが今回は、預かっている物と、1,000万円の貸金は、まったく無関係だ。別件の借金のカタに、たまたま手元にある物を留め置く――これは牽連性がないから、留置権は成立しない。Bさんは、物を返したうえで、貸金は貸金で別に請求するしかない」

「“たまたま持ってる”だけじゃダメなんですね……。スッキリしました」

「ついでに、この問題のもう一つの山も教えておこう」と久保田さんは続けた。「悪意の不法行為で受けた損害――その損害賠償債権を、被害者が“相殺”に使えるか、という論点だ」

「相殺って、たしか“悪意の不法行為”だと禁止じゃ……?」

「禁止されるのは“加害者の側”からの相殺だ(民法509条)。被害者の側が、自分の損害賠償債権を自働債権にして相殺するのは構わない。被害者を守るための禁止だから、被害者自身が使うのはOKなんだ」

「なるほど。“誰を守る制度か”で考える、ですね」桜井くんは手帳を開いた。

― 桜井くんの手帳 ―
・留置権は「その物に関して生じた債権」だけ(牽連性)。
・無関係な借金のカタに、預かり物は留め置けない。
・悪意の不法行為の相殺禁止は“加害者側”だけ。被害者からはOK。

この物語の“宅建ポイント”

  • 留置権は、その物に関して生じた債権(牽連性)がなければ成立しない。無関係な貸金のために、手元の物を留め置くことはできない。
  • 悪意の不法行為に基づく損害賠償債権でも、被害者の側からは相殺できる(民法509条の禁止は“加害者側”からの相殺。=令和7年問4の正解)。
  • 不動産には抵当権だけでなく不動産質権も設定できる。
  • 一般先取特権は、共益費用・雇用関係・葬式費用・日用品供給に限られ、一般の貸金では総財産に行使できない。

この話のもとになった問題令和7年・問4(権利関係/担保物権・相殺)。物語で扱った留置権の牽連性(肢2)と、被害者からの相殺(肢4=正解)がポイントです。

令和7年を解く →
※本コラムは学習用の読み物です。条文・判例の解釈は改正等により変わることがあります。実務・受験にあたっては最新の法令・公式情報をご確認ください。