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COLUMN / 宅建コラム

タダで借りる、ということ
― 桜井くんと賃貸借・使用貸借

権利関係・賃貸借/使用貸借2026年6月28日

同じ「土地を借りる」でも、賃料を払う賃貸借と、タダで借りる使用貸借では、守られ方がまるで違う。お金を払う人は手厚く、タダで借りる人は軽く扱われる――今日の題材は 令和4年・問6。「賃料アリ」と「タダ」の差を見ていきます。

― 久保田塾、昼下がりの相談席にて ―

「先輩、似たような相談が2件あって、混乱してます」桜井くんがメモを見せた。「どちらもAさんがBさんに甲土地を資材置場として2年貸すんですけど、①は賃料あり(賃貸借)、②はタダ(使用貸借)なんです。同じ扱いでいいんですか?」

「全然違うぞ。コツを先に言うと――賃料を払う賃借人は厚く守られ、タダで借りる使用借主は軽い。お金を払ってる分だけ、立場が強いんだ」

「タダより高いものはない、の逆で、タダだから弱い、と」

「うまいこと言うな。じゃあ具体的に見ていこう」

「まず途中でやめたいとき。借主Bのほうから契約を切れますか?」

「①賃貸借は、期間を決めた以上、原則は満期まで。ただし『中途解約できる』という解約権を留保していれば、期間内でも解約の申入れができる。――一方②使用貸借は?」

「タダだから……軽い?」

「そうだ。使用借主Bは、解約権を留保していなくても、いつでも契約を解除できる。タダで借りてるだけだから、いつ返してもいい。これが令和4年問6の正解肢だ」

「①は『留保していれば』、②は『留保なくてもいつでも』。タダのほうが身軽なんですね」

― 久保田さんのホワイトボード ―
① 賃貸借(賃料アリ) vs ② 使用貸借(タダ)
借主からの解除: ①解約権を留保していれば期間内解約 / ②留保なしでもいつでも解除
引渡し前の貸主の解除: ②は書面でなければ貸主が解除できる(①はできない)

「貸主Aのほうからはどうですか。まだ土地を渡す前なら、Aは『やっぱりやめた』と言える?」

「ここも差が出る。①賃貸借は、引渡し前でも貸主が自由に解除はできない。約束は約束だからな。でも②使用貸借で、しかも“書面によらない”(口約束の)契約なら、貸主は引渡し前に解除できる

「タダの口約束は、軽く撤回できる、と。じゃあ書面で交わした使用貸借は?」

「それは撤回できない。書面にした以上はタダでも本気の約束とみて、引渡し前でも解除できなくなる。――『書面の使用貸借でも自由に解除できる』はバツだ」

「なるほど。じゃあ逆に、①と②で“同じ”になるところもあるんですか?」

「いい視点だ。2つある。1つめ、又貸し(転貸)①でも②でも、貸主Aの承諾がなければ第三者に貸せない。タダで借りた人が勝手にまた貸すのもダメ。ここは共通だ」

「②なら承諾なしで又貸しできそう、はひっかけ、と」

「そうだ。2つめ、使い方が悪くて土地を傷めた場合の損害賠償。これは①でも②でも、貸主が土地の返還を受けた時から1年以内に請求しなきゃいけない。短い期間制限だ。『①は5年以内』はバツ――両方とも“返還から1年”でそろえろ」

「違うところと、同じところ。ごっちゃにしないようにします」桜井くんは手帳を開いた。

― 桜井くんの手帳 ―
<違う(タダの②は軽い・身軽)>
・借主の解除 → ①解約権の留保が必要/②留保なしでいつでも解除。
・引渡し前の貸主の解除 → ②は書面でなければ解除できる(①は不可、書面の②も不可)。
<同じ>
・転貸 → ①も②も貸主の承諾が必要
・本旨違反の使用による損害賠償 → ①も②も返還から1年以内

この物語の“宅建ポイント”

  • 借主からの解除:賃貸借は解約権を留保していれば期間内に解約の申入れができる(民法618条)。使用貸借は借主がいつでも契約の解除ができる(民法598条3項)。令和4年問6の正解肢。
  • 引渡し前の貸主の解除:書面によらない使用貸借では、貸主は引渡し前に解除できる(民法593条の2)。書面による使用貸借・賃貸借では自由に解除できない。
  • 転貸は共通:賃貸借も使用貸借も、貸主の承諾がなければ第三者に使用収益させられない(民法612条・594条2項)。
  • 損害賠償の期間も共通:契約の本旨に反する使用による損害賠償は、賃貸借・使用貸借いずれも貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない(民法600条・622条)。「賃貸借は5年」は誤り。

この話のもとになった問題令和4年・問6(権利関係/賃貸借・使用貸借)。「賃料アリは厚く、タダは軽い」という物語の感覚と、共通する部分の見極めが、そのまま4つの肢の正誤になります。正解は「使用借主は解約権を留保していなくてもいつでも解除できる」の肢。

令和4年を解く →
※本コラムは学習用の読み物です。条文・判例の解釈は改正等により変わることがあります。実務・受験にあたっては最新の法令・公式情報をご確認ください。