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COLUMN / 宅建コラム

更新できる部屋、できない部屋
― 桜井くんと定期借家

権利関係・借家2026年6月28日

同じ「居住用・3年」の賃貸でも、定期借家(契約①)普通借家(契約②)では別物――そう身構えがち。でも実は、多くのルールは“両方同じ”。違うのは、思っているより少ない。今日の題材は 令和6年・問12。「同じ」と「違う」の仕分けです。

― 久保田塾、契約書の山の前で ―

「先輩、定期借家ってややこしくないですか。普通の借家と何が違うのか、ごちゃごちゃで」桜井くんが2通の契約書を並べた。「契約①が定期借家、契約②が普通借家。どっちも居住用で3年です」

「いい比べ方だ。コツを教えよう。“違う”を探す前に、“同じ”を先に消し込め。実は両方同じルール、ってのが結構あるんだ」

「じゃあ最初。入居中のBさんがいて、大家AさんがCさんに建物を売っちゃった。新しい大家Cさんに、Bさんは『私は借主です』と言えますか? 定期と普通で違いますよね?」

そこは同じだ。建物の賃借権は、引渡しを受けていれば対抗力がつく。Bさんはもう住んで(引渡しを受けて)いる。だから定期でも普通でも、新大家Cに『借主だ』と主張できる

「えっ、定期だと弱い、とかじゃないんですか」

「ない。『登記がなくても、引渡しで対抗できる』――これは借家の大原則で、定期も普通も区別なしだ。“定期だと主張できない”はバツ

「次。Bさんが亡くなって、しかも相続人がいない。でも内縁の奥さん(事実上夫婦のDさん)が一緒に住んでた。Dさんは部屋を引き継げますか?」

これも同じだ居住用建物で、借主が相続人なしで亡くなったとき、内縁の配偶者など事実上夫婦・養親子の同居者は、賃借人の地位を引き継ぐ。Dさんが『いりません』と反対しない限りな。定期でも普通でも適用される」

「住む場所を失わせない、っていう保護ですね。それも両方共通……。あれ、けっこう同じばっかりだ」

「そうだろう。“同じ”が多い。だから違いが目立つ

― 久保田さんのホワイトボード ―
定期① と 普通② で 同じもの:
・対抗力 → 引渡しを受ければ新所有者に主張できる
・居住用建物の承継 → 内縁配偶者など同居者が引き継ぐ

違うもの:
・賃料の減額請求 ・更新のしくみ

「じゃあ本題の“違い”だ。1つめ、賃料の減額請求。『契約期間中は賃料を変えない』という特約を結んでいたとする。それでも借主Bは『高すぎる、下げて』と減額請求できるか?」

「えーと、普通借家(②)なら……法律で減額請求が認められてますよね」

「正解。普通借家は、不減特約があっても借地借家法32条で減額請求できる。借主保護が強いんだ。では定期借家(①)は?

「同じく……できる?」

「ここが違う。定期借家で“賃料を改定しない”特約があると、32条は適用されず、減額請求できない。当事者が決めた賃料の約束を尊重するんだ。『定期も減額請求できる』はバツ。ここがひっかけの定番だ」

「2つめの違いが、更新ですよね。定期借家って、更新がない契約……」

「そうだ。定期借家は“更新がない”と定められる。ただし作り方に決まりがある。ここで出題者が罠を仕掛けてくる。『公正証書によってするときに限り、更新がない旨を定められる』――これ、正しいと思うか?

「公正証書が必要……合ってそうな気が」

「バツだ。定期借家は“公正証書による等の書面”でよく、公正証書に限られない。『公正証書に限り』と限定するのが誤りだ。一方、普通借家(②)は、貸主に正当事由がない限り更新拒絶できない――こっちは借主が手厚く守られる」

「“公正証書に限る”は言い過ぎ、なんですね。書面ならOK」桜井くんは手帳を開いた。

― 桜井くんの手帳 ―
<定期①も普通②も同じ>
・対抗力 → 引渡しでOK(登記不要、定期でも主張できる)。
・居住用の承継 → 内縁配偶者など同居者が引き継ぐ(反対しなければ)。
<違う>
・賃料減額:普通=できる/定期=“不改定特約”があればできない。
・更新:定期=「更新なし」を公正証書“等”の書面で定める(公正証書に限らない)/普通=正当事由なしに更新拒絶できない。

この物語の“宅建ポイント”

  • 対抗力は共通:建物賃借権は引渡しを受ければ対抗力を備える(借地借家法31条)。定期・普通を問わず、新所有者に賃借人であることを主張できる。
  • 居住用建物の承継は共通:借主が相続人なしで死亡したとき、事実上夫婦・養親子の同居者は反対しない限り賃借人の権利義務を承継する(借地借家法36条)。定期・普通とも適用。
  • 賃料減額請求は違う:普通借家は不減特約があっても減額請求できる(32条)。定期借家は賃料を改定しない特約があれば32条が適用されず減額請求できない(38条9項)。
  • 更新・要式は違う:定期借家は「更新がない」旨を公正証書“等”の書面で定める(38条1項。公正証書に限らない)。普通借家は貸主に正当事由がない限り更新拒絶できない。

この話のもとになった問題令和6年・問12(権利関係/借家)。「定期と普通で同じか・違うか」の仕分けが、そのまま4つの肢の正誤になります。正解は「相続人なしで死亡した借主の同居者が、定期でも普通でも賃借権を承継する」の肢。

令和6年を解く →
※本コラムは学習用の読み物です。条文・判例の解釈は改正等により変わることがあります。実務・受験にあたっては最新の法令・公式情報をご確認ください。