借金のカタに土地に付けられる抵当権。その土地を買った人、競売で借り手を追い出すまで、債務者本人――立場によって、できること・できないことが変わります。今日の題材は 令和4年・問4。抵当権をめぐる「誰が何をできるか」を見ていきます。
「先輩、抵当権の付いた土地って、買っても大丈夫なんですか?」桜井くんが図を描きながら聞いた。「Aさんの甲土地に、CさんがBさんへの貸金のために抵当権を付けてて。この土地をDさんが買おうとしてるんです」
「いい相談だ。抵当権付きの不動産を買った人を第三取得者という。DがBの借金を背負うわけじゃないが、抵当権が実行されると土地を失うリスクはある。そこで、Dが土地を守る手段がいくつか用意されてる」
「守る手段、ですか」
「ああ。その一つが代価弁済だ。抵当権者Cが『その代金を私に払ってくれ』と請求して、第三取得者Dがそれに応じて代価を払うと、抵当権はDのために消滅する」
「Cさんから請求してもらって、その分を払えば、抵当権が消える。Dさんは安心して土地を持てる、と」
「そういうことだ。これが令和4年問4の正解肢。買主Dが抵当権の重荷をきれいに外せる仕組みだな」
代価弁済: 抵当権者Cの請求に応じてDが代価を払う → 抵当権はDのために消滅
「先輩、似た言葉で抵当権消滅請求っていうのもありますよね。あれもDさんが使えるんですか?」
「使える。ただし使えない人がいる。主たる債務者・保証人・その承継人は、抵当権消滅請求ができない。自分が払うべき借金なのに、安く見積もって抵当権だけ消す、なんて虫が良すぎるからな」
「なるほど。じゃあ、もし債務者のBさん自身が、その土地を買ったら?」
「鋭い。債務者Bが買主になっても、Bは抵当権消滅請求はできない。あくまで借りた本人だからだ。『Bが第三取得者として消滅請求できる』はバツ。――代価弁済との違い、ここで効いてくる」
「次に、競売のことなんですけど」桜井くんがページをめくる。「抵当権が実行されて競売になったとき、その土地に住んでる人(借りてる人)はすぐ出ていかなきゃいけないんですか?」
「そこに引渡し猶予という救済がある。競売の買受人が買い受けてから6か月間は、明渡しを猶予される。ただし――これは“建物”の話だ」
「土地は?」
「土地には、この6か月の引渡し猶予はない。住む場所(建物)だからこその保護で、更地の土地利用者には及ばない。『土地の使用者も6か月猶予される』はバツ。建物限定、と覚えろ」
「最後にもう一個。抵当権を設定した後に、その土地の上に建物が建ったら、競売はどうなるんですか?」
「一括競売だな。更地に抵当権を付けた後で建物が建つと、土地だけ競売しても買い手がつきにくい。そこで土地と建物を“一括して”競売にかけられる。ただし――これは“できる”だけで、義務じゃない」
「しなきゃいけない、わけじゃない」
「そう。『建物も一緒に競売を申し立てなければならない』はバツ。あくまで任意だ。しかも優先弁済を受けられるのは土地の代金からだけ、というオマケもある。――今日の4つ、どれも『誰が・何を・できる/できない』の問題だっただろう」
「ほんとですね。立場で変わる、を意識します」桜井くんは手帳を開いた。
・抵当権消滅請求:第三取得者はできるが、債務者・保証人はできない。
・引渡し猶予6か月:建物だけ。土地には猶予なし。
・一括競売:土地+建物をまとめて競売“できる”(義務ではない)。優先弁済は土地代金から。
この物語の“宅建ポイント”
- 代価弁済:抵当権者の請求に応じて第三取得者が代価を弁済したときは、抵当権はその第三取得者のために消滅する(民法378条)。令和4年問4の正解肢。
- 引渡し猶予は建物のみ:買受けの時から6か月の明渡し猶予は「建物」使用者の規定で、土地には適用されない(民法395条)。
- 一括競売は任意:抵当権設定後に築造された建物は土地と一括して競売できるが、しなければならないわけではない(民法389条)。優先弁済は土地の代価から。
- 債務者は消滅請求不可:抵当不動産の第三取得者でも、主たる債務者・保証人等は抵当権消滅請求ができない(民法380条)。
この話のもとになった問題令和4年・問4(権利関係/抵当権)。「立場によってできること・できないことが変わる」という物語の視点が、そのまま4つの肢の正誤につながります。正解は「代価弁済により抵当権が第三取得者のために消滅する」の肢。
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