宅建業法には、8種制限と呼ばれる特別ルールがあります。ふだんの取引には無く、ある一つの場面でだけ発動する。その「場面」を外すと全部が空振りになる——まずはそこから。桜井くんの勘違いを直していきましょう。
― 自社物件の販売会議 ―
「この中古マンション、手付を代金の3割もらいましょう! 早期成約のしるしに」と桜井くん。
久保田さんが止めた。「桜井、それはできない。うちが自ら売主で、買主が一般の個人なら、手付は代金の2割までしか受け取れない。これは8種制限の一つだ」
「8種制限……全部の取引に効くんですか?」
「そこが一番大事だ。8種制限が効くのは、宅建業者が“自ら売主”で、買主が“宅建業者でない”ときだけ。プロがプロに売る業者どうしの取引や、うちが売主でなく“媒介”で入るだけの取引には適用されない。守るのは“何も知らない素人の買主”だからな」
「なるほど。じゃあ相手が宅建業者なら、手付3割でも?」
「業者間なら8種制限は外れるから、手付の2割制限もかからない。——場面さえ合えば、こういう縛りが8つ一気にかかる。並べて覚えろ」
久保田さんは、ホワイトボードに8つを書き出した。
8種制限=「自ら売主(業者)×買主が非業者」のときだけ
| # | 制限の内容 |
|---|---|
| 1 | 自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限(他人物・未完成物件) |
| 2 | クーリング・オフ(事務所等以外での契約は解除できる) |
| 3 | 損害賠償額の予定・違約金の制限(合わせて代金の2割まで) |
| 4 | 手付の額の制限(代金の2割まで)・手付は解約手付とみなす |
| 5 | 手付金等の保全措置 |
| 6 | 契約不適合責任の特約の制限(引渡しから2年以上とする以外は無効) |
| 7 | 割賦販売契約の解除等の制限 |
| 8 | 所有権留保等の禁止 |
「3の損害賠償の予定も、4の手付も、どちらも『代金の2割』が上限だ。ここは数字がそろっていて覚えやすい。2割を超える手付の定めをしても、超える部分は無効になる」
桜井くんは手帳に書き込んだ。
― 桜井くんの手帳 ―
・8種制限は「自ら売主(業者) × 買主が非業者」のときだけ発動。・業者どうし/媒介で入るだけ、なら適用なし。
・手付は2割まで(超過分は無効・解約手付とみなす)。
・損害賠償額の予定+違約金も、合わせて2割まで。
この物語の“宅建ポイント”
- 8種制限は、宅地建物取引業者が自ら売主となり、かつ買主が宅地建物取引業者でない場合にのみ適用される。業者間取引や、業者が媒介・代理として関与するだけの取引には適用されない。
- 手付の額は代金の額の10分の2(2割)を超えてはならない。超える部分は無効。受け取った手付は解約手付とみなされる。
- 損害賠償額の予定・違約金は、合算して代金の額の10分の2(2割)を超えることができない。超える定めをしても、超過部分が無効となる。
- このほか、他人物・未完成物件の契約制限、クーリング・オフ、手付金等の保全、契約不適合責任の特約制限(引渡しから2年以上)、割賦販売の解除等の制限、所有権留保等の禁止が含まれる。
この論点を、肢で確かめる8種制限は「適用場面を外していないか」を最初に問う定番。肢別ドリルの「宅建業法 → 8種制限」で、〇×を繰り返して2割の数字と適用場面を固めましょう。
肢別ドリルで解く →※本コラムは学習用の読み物です。8種制限の内容は法改正により変わることがあります(契約不適合責任など)。受験・実務にあたっては最新の宅建業法をご確認ください。