地方の空き家(代金700万円)の売却を任された桜井くん。「低廉な空家等の特例で、33万円もらえるんですよね!」と意気込む。気持ちはいいが、順番が逆でした。33万円という数字が先にあるのではない。まず“特例に当たるか”。もし900万円の家だったら、同じ33万円は出てきません。
「先輩、この700万円の空き家、特例で33万円もらえますよね?」
「順番が逆だ、桜井。まず、この特例が何かを押さえろ。低廉な空家等の売買の媒介の特例。対象は代金800万円以下の宅地建物だ。もともと400万円以下だったが、令和6年7月の改正で800万円以下に引き上げられた」
「700万円なら、800万円以下だからセーフですね。それで33万円?」
「まだ早い。金額のほかに条件がある。通常の売買と比べて“現地調査等の費用”を要すること、そして媒介契約の締結までに、依頼者に説明して合意を得ること。この手続を踏んで初めて、上乗せができる。ちなみに——令和6年の改正で、この上乗せは売主でも買主でも、どちらの依頼者からでも受けられるようになった(改正前は売主側だけだった)」
「上乗せ……いくらまでですか?」
「通常の速算式で計算した額を超えて受け取れる。ただし30万円+消費税=税込33万円が上限だ(課税事業者の場合)。青天井じゃない」
「なるほど。ちなみに、これって800万円ギリギリじゃなくても得なんですか?」
「いい質問だ。安い物件ほど効く。たとえば300万円の空き家。通常計算だと『300万×4%+2万=14万(税抜)=税込15万4,000円』にしかならない。でも特例なら税込33万円まで受け取れる。安い物件は通常報酬が小さいから、この上乗せが生きる」
「じゃあ、もし900万円の家だったら? もっともらえます?」
「そこが今日いちばんの落とし穴だ。900万円は800万円を“超える”から、特例に当たらない。特例に当たらない以上、“低廉な空家等として”33万円、という受け取り方はできない。通常の速算式で計算する。『900万×3%+6万=33万(税抜)=税込36万3,000円』が上限だ」
「あれ……900万円のほうが、金額としては多い?」
「そう。だから『33万円を受け取れるか』ではなく『“特例として”受け取れるか』で正誤が決まる。試験は『900万円の空き家で低廉な空家等の特例により33万円』みたいな肢で、この“当てはめ”を突いてくる。金額が800万円以下か——そこがスイッチだ」
桜井くんは、数字の順番を逆から書き直した。
・要件=現地調査等の費用を要する+媒介契約前に依頼者へ説明・合意。
・上限=速算式の額を超えて税込33万円(30万+税)まで。
・900万円は特例外→通常計算(税込36万3,000円まで)。“33万円が先”ではない!
「金額・要件・上限。順に確認するクセをつけろ」。久保田さんは表を書いた。
| 代金 | 特例? | 受け取れる上限(目安) |
|---|---|---|
| 300万円 | 〇(800万円以下) | 通常なら税込15万4,000円 → 特例で税込33万円まで |
| 800万円 | 〇 | 通常も税込33万円/特例も税込33万円 |
| 900万円 | ×(800万円超) | 通常計算のみ:(900万×3%+6万)×1.1=税込36万3,000円 |
※特例は現地調査等の費用を要し、媒介契約前に依頼者へ説明・合意した場合に限り、上限まで受領できる。令和6年の改正で、売主・買主どちらの依頼者からでも受けられる(改正前は売主側のみ)。
「先輩、僕、『空き家=33万円』って呪文みたいに覚えてました……」
「数字だけ暗記すると、当てはめでつまずく。“800万円以下か”を先に見て、そのうえで33万円。順番を、絶対に逆にするな」
この物語の“宅建ポイント”
- 低廉な空家等の売買の媒介の特例は、代金800万円以下の宅地建物が対象。令和6年7月の改正で、対象が400万円以下から800万円以下に引き上げられた(当サイトは800万円で統一)。
- 要件は、通常の売買より現地調査等の費用を要すること+媒介契約の締結までに依頼者へ説明し合意を得ること。この手続を踏んで初めて上乗せできる。
- 上限は、通常の速算式で計算した額を超えて、税込33万円(30万円+消費税)まで。足し算ではなく、33万円という天井に置き換わる。令和6年の改正で、売主・買主どちらの依頼者からでも受けられるようになった(改正前は売主側のみ)。青天井ではない。
- 800万円を超える物件は特例に当たらず、通常の速算式で計算する。例:900万円なら (900万×3%+6万)×1.1=税込36万3,000円が上限。「33万円を受け取れるか」ではなく「“特例として”受け取れるか」で正誤が決まる。
この論点を、肢で確かめる「代金がいくらか」「特例に当たるか」「上限はいくらか」——報酬の肢は、当てはめの順番で差がつきます。肢別ドリルの「宅建業法」で、金額を見た瞬間に特例か通常かを判断できるようにしましょう。
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