宅建・不動産資格チャンネル
COLUMN / 宅建コラム

その「33万円」は、金額では決まらない
― 新人仲介・桜井くんの空家特例

宅建業法・報酬の制限2026年9月17日

地方の空き家(代金700万円)の売却を任された桜井くん。「低廉な空家等の特例で、33万円もらえるんですよね!」と意気込む。気持ちはいいが、順番が逆でした。33万円という数字が先にあるのではない。まず“特例に当たるか”。もし900万円の家だったら、同じ33万円は出てきません。

― 同じ不動産会社、空き家の媒介依頼を受けて ―

「先輩、この700万円の空き家、特例で33万円もらえますよね?」

「順番が逆だ、桜井。まず、この特例が何かを押さえろ。低廉な空家等の売買の媒介の特例。対象は代金800万円以下の宅地建物だ。もともと400万円以下だったが、令和6年7月の改正で800万円以下に引き上げられた」

「700万円なら、800万円以下だからセーフですね。それで33万円?」

「まだ早い。金額のほかに条件がある。通常の売買と比べて“現地調査等の費用”を要すること、そして媒介契約の締結までに、依頼者に説明して合意を得ること。この手続を踏んで初めて、上乗せができる。ちなみに——令和6年の改正で、この上乗せは売主でも買主でも、どちらの依頼者からでも受けられるようになった(改正前は売主側だけだった)」

「上乗せ……いくらまでですか?」

「通常の速算式で計算した額を超えて受け取れる。ただし30万円+消費税=税込33万円が上限だ(課税事業者の場合)。青天井じゃない」

「なるほど。ちなみに、これって800万円ギリギリじゃなくても得なんですか?」

「いい質問だ。安い物件ほど効く。たとえば300万円の空き家。通常計算だと『300万×4%+2万=14万(税抜)=税込15万4,000円』にしかならない。でも特例なら税込33万円まで受け取れる。安い物件は通常報酬が小さいから、この上乗せが生きる」

「じゃあ、もし900万円の家だったら? もっともらえます?」

「そこが今日いちばんの落とし穴だ。900万円は800万円を“超える”から、特例に当たらない。特例に当たらない以上、“低廉な空家等として”33万円、という受け取り方はできない。通常の速算式で計算する。『900万×3%+6万=33万(税抜)=税込36万3,000円』が上限だ」

「あれ……900万円のほうが、金額としては多い?」

「そう。だから『33万円を受け取れるか』ではなく『“特例として”受け取れるか』で正誤が決まる。試験は『900万円の空き家で低廉な空家等の特例により33万円』みたいな肢で、この“当てはめ”を突いてくる。金額が800万円以下か——そこがスイッチだ」

桜井くんは、数字の順番を逆から書き直した。

― 桜井くんの手帳 ―
・低廉な空家等=代金800万円以下(令和6年7月に400万→800万)。
・要件=現地調査等の費用を要する+媒介契約前に依頼者へ説明・合意。
・上限=速算式の額を超えて税込33万円(30万+税)まで。
・900万円は特例外→通常計算(税込36万3,000円まで)。“33万円が先”ではない!

「金額・要件・上限。順に確認するクセをつけろ」。久保田さんは表を書いた。

低廉な空家等の特例か、通常計算か(依頼者から受ける媒介報酬・課税事業者)
代金特例?受け取れる上限(目安)
300万円〇(800万円以下)通常なら税込15万4,000円 → 特例で税込33万円まで
800万円〇通常も税込33万円/特例も税込33万円
900万円×(800万円超)通常計算のみ:(900万×3%+6万)×1.1=税込36万3,000円

※特例は現地調査等の費用を要し、媒介契約前に依頼者へ説明・合意した場合に限り、上限まで受領できる。令和6年の改正で、売主・買主どちらの依頼者からでも受けられる(改正前は売主側のみ)。

「先輩、僕、『空き家=33万円』って呪文みたいに覚えてました……」

「数字だけ暗記すると、当てはめでつまずく。“800万円以下か”を先に見て、そのうえで33万円。順番を、絶対に逆にするな」

この物語の“宅建ポイント”

  • 低廉な空家等の売買の媒介の特例は、代金800万円以下の宅地建物が対象。令和6年7月の改正で、対象が400万円以下から800万円以下に引き上げられた(当サイトは800万円で統一)。
  • 要件は、通常の売買より現地調査等の費用を要すること+媒介契約の締結までに依頼者へ説明し合意を得ること。この手続を踏んで初めて上乗せできる。
  • 上限は、通常の速算式で計算した額を超えて、税込33万円(30万円+消費税)まで。足し算ではなく、33万円という天井に置き換わる。令和6年の改正で、売主・買主どちらの依頼者からでも受けられるようになった(改正前は売主側のみ)。青天井ではない。
  • 800万円を超える物件は特例に当たらず、通常の速算式で計算する。例:900万円なら (900万×3%+6万)×1.1=税込36万3,000円が上限。「33万円を受け取れるか」ではなく「“特例として”受け取れるか」で正誤が決まる。

この論点を、肢で確かめる「代金がいくらか」「特例に当たるか」「上限はいくらか」——報酬の肢は、当てはめの順番で差がつきます。肢別ドリルの「宅建業法」で、金額を見た瞬間に特例か通常かを判断できるようにしましょう。

肢別ドリルで解く →
※本コラムは学習用の読み物です。報酬額は消費税率や告示の改正により変わることがあり、金額は課税事業者を前提とした目安です。受取りには依頼者への事前の説明・合意など所定の要件があります。受験・実務にあたっては最新の宅地建物取引業法・報酬告示をご確認ください。