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COLUMN / 宅建コラム

いちばん手厚い契約の、落とし穴
― 新人仲介・桜井くんの媒介契約

宅建業法・媒介契約2026年7月29日

お客さんから「家を売ってほしい」と頼まれたとき、最初に結ぶのが媒介契約。一般・専任・専属専任の3種類があり、宅建業法では毎年ここが問われます。「手厚いほどお客さんに親切」——そう思った桜井くんが、一つ大事な落とし穴にはまります。

― ある土曜日、売却相談に来たFさんと ―

自宅マンションを売りたいというFさん。桜井くんは張り切って切り出した。

「Fさん、いちばん手厚い専属専任媒介がおすすめです! うちが責任を持って動きますし、ご報告もこまめにしますよ」

Fさんは、少し困った顔をした。

「実はね、隣に住む甥っ子が『買ってもいいよ』って言ってて。もし話がまとまったら、その子と直接売買しようかとも思ってるの」

桜井くんが「では専属専任で!」と契約書を出しかけたとき、先輩の久保田さんが割って入った。

「桜井、待て。それだとFさんが困る。専属専任媒介は、依頼者が“自分で見つけた相手”とも、直接は契約できないんだ。甥っ子さんに売る場合でも、必ずうちを通してもらうことになる」

「えっ、自分で見つけた相手でもダメなんですか?」

「そう。そこが専属専任の“縛り”だ。専任媒介なら、他社に重ねて頼むことはできないが、自分で見つけた相手とは直接契約していい(自己発見取引)。甥っ子さんの件があるなら、Fさんには専任のほうが合ってる」

Fさんは「じゃあ専任でお願い」とうなずいた。桜井くんは、契約書の有効期間の欄に「6か月・自動更新」と書き込もうとした。

「先輩、長めに6か月にして、自動更新にしておけば手間が省けますよね?」

「二つとも直さないとダメだ」。久保田さんはペンを止めた。「専任・専属専任の有効期間は、3か月(3月)を超えられない。6か月と書いても、超えた部分は無効で、3か月に縮められる。それと——自動更新はできない。更新するなら、依頼者からの“申出”が必要だ。勝手に延ばす契約にはできないんだよ」

「うぐ……。じゃあ『一般媒介』は、期間の制限はないんですか?」

「一般には有効期間の法的な制限はない。他社にも重ねて頼めるし、報告義務も指定流通機構への登録義務もない。“縛りが緩い代わりに、業者の義務も軽い”のが一般だ。逆に専任・専属専任は、業者が縛られる代わりに、依頼者への義務が重くなる。ここを表で覚えろ」

久保田さんは、ホワイトボードに三列の表を書いた。

媒介契約 3種類の早見表
一般媒介専任媒介専属専任媒介
他社に重ねて依頼できるできないできない
自分で見つけた相手と直接契約
(自己発見取引)
できるできるできない
有効期間制限なし3か月以内(更新は依頼者の申出により/自動更新不可)
業務処理状況の報告義務なし2週間に1回以上1週間に1回以上
指定流通機構への登録義務なし7日以内5日以内

「報告と登録の日数は、“手厚いほど日数が短い(=間隔が短い・早く登録)”と押さえると迷わない。専属専任は報告1週間・登録5日、専任は報告2週間・登録7日。数字が小さいほうが専属専任だ」

「なるほど……。登録の日数は、宅建業者の休業日を除いて数えるんですよね」

「よく覚えてたな。7日・5日とも、休業日は数えない。——お客さんの事情に合わせて、正しい種類を選ぶ。それが最初の仕事だ」

桜井くんは、Fさんに専任媒介の中身をていねいに説明し、手帳にこう書きつけた。

― 桜井くんの手帳 ―
・専属専任=自分で見つけた相手とも直接契約ダメ(必ず業者を通す)。
・専任=他社はダメ、でも自己発見取引はOK。
・専任・専属専任の期間は3か月まで。自動更新はナシ(申出で更新)。
・報告 専任2週/専属1週。登録 専任7日/専属5日(休業日は数えない)。

この物語の“宅建ポイント”

  • 専属専任媒介では、依頼者が自分で見つけた相手方とも、その業者を通さずに契約することはできない。専任媒介では自己発見取引ができる点と対比。
  • 専任媒介・専属専任媒介の有効期間は3か月(3月)を超えることができない。3か月を超える定めをしても、その期間は3か月に短縮される。
  • 専任・専属専任の更新は、依頼者からの申出があるときに限りできる(自動更新の特約は無効)。更新後の期間も3か月以内。
  • 業務処理状況の報告は、専任媒介で2週間に1回以上、専属専任媒介で1週間に1回以上。一般媒介には報告義務がない。
  • 指定流通機構への登録は、専任媒介で契約日から7日以内、専属専任媒介で5日以内(いずれも業者の休業日を除く)。一般媒介には登録義務がない。
  • 媒介契約書(34条の2書面)は、宅地建物取引業者が記名して依頼者に交付する。宅建士による記名や説明は不要(37条書面が宅建士の記名を要するのと区別)。

この論点を、肢で確かめる媒介契約は「一般・専任・専属専任」の数字を入れ替えて問う定番テーマ。肢別ドリルの「宅建業法 → 媒介契約」で、報告と登録の日数を〇×で固めましょう。

肢別ドリルで解く →
※本コラムは学習用の読み物です。媒介契約の記載事項・手続は法改正により変わることがあります(媒介契約書の記名・押印の要否、電磁的方法による提供など)。受験・実務にあたっては最新の宅建業法・施行規則をご確認ください。