自分の土地でなくても、他人の土地を“使わせてもらう”権利があります。通り抜けさせてもらう、建物を建てさせてもらう——。地役権と地上権です。名前が似ていて混ざりやすいので、性質の違いをきちんと分けましょう。桜井くんが案内で出会った袋地の相談から。
「先輩、この奥の土地、隣の私道を通らないと車が入れません。持ち主は“昔から通らせてもらってる”そうですが、これって何の権利ですか?」
「典型的な地役権だな。自分の土地の便益(役に立つこと)のために、他人の土地を利用する権利だ。利益を受ける自分の土地を“要役地”、使わせてもらう相手の土地を“承役地”という。通行地役権なら、承役地を通らせてもらう権利だ」
「要役地が“得する側”、承役地が“貸す側”ですね。地役権って、土地とセットなんですか?」
「いいところだ。地役権には三つの性質がある。付従性・随伴性・不可分性だ。とくに随伴性——要役地が売られれば、地役権も原則としてその買主に移っていく。要役地だけ、地役権だけ、と切り離して扱えないんだ」
「“昔から通っている”だけで、権利になることもあるんですか?」
「時効取得の話だな。ここは正確に。地役権を時効取得できるのは、“継続的に行使され、かつ、外形上認識することができる”ものに限られる。“継続 かつ 外形上認識”——ここを“または”にした肢は誤りだ。両方そろって初めて時効取得できる」
「“かつ”が急所なんですね。……ところで、隣にもう一つ、他人の土地に家を建てて住んでいる人がいます。あれは?」
「それは地上権のケースかもしれない。地上権は、他人の土地で工作物や竹木を所有するために、その土地を使用する“物権”だ。地役権が『土地の便益のため』なのに対し、地上権は『そこに建物などを所有するため』に土地そのものを使う」
「借りて使うなら、賃貸借(賃借権)と何が違うんですか?」
「そこが試験の狙いどころだ。賃借権は“債権”だが、地上権は“物権”。だから地上権は強い。地代は地上権の要素ではなく(無償の地上権もありうる)、地上権者は原則として自由に譲渡したり、土地を賃貸したりできる。賃借権だと、譲渡や転貸に原則として賃貸人の承諾が要るのと対照的だ」
桜井くんは、三つの権利を並べて手帳に整理した。
・性質は付従性・随伴性・不可分性。要役地が売れれば地役権も付いていく。
・時効取得は「継続 かつ 外形上認識」できるものに限る(“または”は誤り)。
・地上権=他人の土地で工作物等を所有する“物権”。地代は要素でない。譲渡・賃貸ができる。
| 性質 | 内容 | |
|---|---|---|
| 地役権 | 物権 | 要役地の便益のため承役地を利用(付従性・随伴性・不可分性) |
| 地上権 | 物権 | 他人の土地で工作物・竹木を所有。譲渡・賃貸ができる(地代は要素でない) |
| 賃借権 | 債権 | 賃料を払って借りる。譲渡・転貸に原則として賃貸人の承諾が必要 |
「桜井、大きく分ければ『地役権は“土地のための”利用権、地上権は“物を所有するための”利用権』だ。そして地上権は物権だから、賃借権よりずっと自由が利く。ここを対比で押さえろ」
「要役地・承役地の向きと、“かつ”の時効取得。忘れません」
この物語の“宅建ポイント”
- 地役権は、自分の土地(要役地)の便益のために、他人の土地(承役地)を利用する権利。地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、承役地を要役地の便益に供する権利を有する。
- 地役権には付従性・随伴性・不可分性があり、要役地の所有権が移転すれば地役権も原則としてこれに伴って移転する。
- 地役権は、継続的に行使され、かつ外形上認識することができるものに限り、時効取得できる。「継続的に行使され、又は外形上認識できるもの」とするのは誤り。
- 地上権は、他人の土地で工作物または竹木を所有するためにその土地を使用する物権である。地代は地上権の要素ではなく、地上権者は原則として地上権を譲渡し、また土地を賃貸することができる。
- 地上権は物権であり、債権である賃借権(譲渡・転貸に原則として賃貸人の承諾が必要)と性質が異なる。
この論点を、肢で確かめる地役権・地上権は「要役地/承役地の向き」「“かつ”の時効取得」「物権か債権か」を突く定番。肢別ドリルの「権利関係 → 地役権・地上権」で、〇×を繰り返して固めましょう。
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