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COLUMN / 宅建コラム

「話が違う」と言われたら
― 桜井くんと契約不適合責任

権利関係・売買2026年7月30日

「買った土地に、聞いていない問題があった」——引渡しのあとで持ち上がる、こわいトラブル。このとき買主が売主に何を言えるかを定めたのが契約不適合責任です。かつての「瑕疵担保責任」が民法改正で作り替えられた、今の売買の基本。桜井くんの受けたクレームから見ていきましょう。

― 引渡し後、買主から一本の電話 ―

「先輩、大変です。先月お引渡しした土地、買主のFさんから『土壌に問題があった、話が違う』と連絡が……」

「落ち着け。まず整理だ。引き渡された物が、種類・品質・数量について“契約の内容に適合しない”とき、買主は売主に責任を追及できる。これが契約不適合責任だ。土壌の状態が契約で前提とした品質に達していないなら、まさにこれに当たる」

「Fさんは何を請求できるんですか?」

「大きく四つある。①追完請求——直せ、代わりの物をよこせ、足りない分をよこせ。②代金減額請求。③損害賠償請求。④契約の解除だ。いきなり全部ではなく、まずは追完を求め、それでも直らないときに減額、というのが基本の流れだ」

「じゃあ、いつまでに言えばいいんですか。何年も経ってから急に言われても困りますよね」

「そこが急所だ。種類・品質の不適合は、買主が“その不適合を知った時から1年以内”に、売主へ“通知”しないと責任を追及できない。ここで大事なのは『通知』でいい、ということ。1年以内に裁判まで起こす必要はない。『知った時から』であって『引渡しから』ではない点も、よく引っかけてくる」

「知った時から1年“以内に通知”……。裁判までは要らないんですね」

「そうだ。ただし例外もある。売主がその不適合を知っていた(悪意)、または重大な過失で知らなかったときは、この1年の通知の縛りはかからない。知っていて黙っていた売主を、期間で守る必要はないからな」

桜井くんは、ふと不安になって尋ねた。「うち……“仲介”で入っただけですけど、うちもFさんに責任を負うんですか?」

「そこは正確にな。契約不適合責任を負うのは、売買契約の当事者である“売主”だ。媒介をしたにすぎない業者は売主ではないから、買主に対して契約不適合責任は負わない。もっとも、調査や説明を尽くしたかは別の話だから、そこは丁寧にな」

桜井くんは、ホッとしつつ手帳を開いた。

― 桜井くんの手帳 ―
・不適合=種類・品質・数量が「契約の内容」に合わない状態。
・買主の手段は4つ:①追完 ②代金減額 ③損害賠償 ④解除。
・種類・品質の不適合は「知った時から1年以内に通知」(裁判までは不要)。
・売主が悪意・重過失なら、1年の通知の縛りはナシ。
・媒介しただけの業者は“売主”でないので契約不適合責任は負わない。

「もう一つ、実務で効く話だ」と久保田さん。「うちが“自ら売主”になって、買主が宅建業者でない一般のお客さんのときは、宅建業法の特別ルールがかかる。種類・品質の不適合の通知期間を『引渡しの日から2年以上』とする特約を除いて、民法より買主に不利な特約は無効だ。『解除は一切させない』なんて特約は、この場面では通らない」

買主が使える4つの手段(契約不適合責任)
手段中身
追完請求修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しを求める(まずはここから)
代金減額請求原則、催告して追完がないときに、不適合の程度に応じて減額
損害賠償請求不適合によって生じた損害の賠償を求める
契約の解除契約の目的を達せられない等のとき、契約を解除する

この物語の“宅建ポイント”

  • 引き渡された目的物が種類・品質・数量について契約の内容に適合しないとき、買主は追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約の解除ができる。代金減額は、原則として催告して追完がないときに認められる。
  • 種類・品質の不適合は、買主がその不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、責任を追及できない。期間内に必要なのは「通知」であり、訴訟提起までは要しない。「引渡しから1年」ではなく「知った時から1年」である。
  • 売主が引渡しの時に不適合を知っていた(悪意)、または重大な過失で知らなかったときは、1年以内の通知がなくても買主は責任を追及できる。
  • 契約不適合責任を負うのは売買契約の売主であって、媒介をしたにすぎない業者は売主でないため、この責任を負わない。
  • 宅建業者が自ら売主となり買主が宅建業者でない場合、通知期間を「引渡しの日から2年以上」とする特約を除き、民法より買主に不利な特約は無効となる。

この論点を、肢で確かめる契約不適合責任は「4つの手段」と「知った時から1年の通知」を突く定番。肢別ドリルの「権利関係 → 売買(契約不適合責任)」で、〇×を繰り返して要件を固めましょう。

肢別ドリルで解く →
※本コラムは学習用の読み物です。契約不適合責任の要件・期間・特約の制限は法改正により変わることがあります。受験・実務にあたっては最新の民法・宅地建物取引業法をご確認ください。