お客さんの背中を押したい——その気持ちは大事。でも宅建業法は、営業の「行き過ぎた一言」をいくつも禁止しています。業務上の規制は毎年問われる得点源。桜井くんの熱心すぎるセールストークから、やってはいけない線を学びましょう。
迷っているお客さんに、桜井くんが力強く言った。
「このエリアは絶対に値上がりします。買えば必ず儲かりますよ!」
商談のあと、久保田さんが桜井くんを呼んだ。「桜井、今の“必ず儲かる”はアウトだ。利益が生じることが確実だと誤解させる『断定的判断の提供』は禁止されている。値上がりなんて誰にも断言できないだろう」
「でも、自信をもっておすすめしたくて……」
「気持ちは分かる。でも“断定”はダメだ。それに桜井、さっき『手付が足りないなら、私が立て替えますよ』とも言いかけていたな。手付を貸したり、分割・後払いにしたり——そういう“信用の供与”で契約を誘い込むのも禁止だ。手付が足りないお客に貸してまで契約させるな」
「じゃあ、手付の“金額を安くします”はどうですか?」
「それはセーフだ。手付そのものを減額するのは信用の供与にあたらない。貸すのはダメ、まけるのはよい。ここは試験の大好物だぞ」
桜井くんはさらに、チラシの原稿を見せた。「先輩、この広告『駅から徒歩3分・日当たり抜群の最高物件!』ってどうですか」
「実際は徒歩8分だろう。著しく事実と違う、実際よりずっと良く見せる『誇大広告』は禁止だ。しかも怖いのは——お客さんが誰も損しなくても、契約が一件も成立しなくても、その広告を出した時点で違反が成立することだ」
「被害が出てなくてもダメなんですか……」
「そうだ。広告は世の中に出た瞬間に効いてしまうからな。あと一つ、忘れるな。お客さんの秘密は、正当な理由なく漏らしてはいけない。しかも、この会社を辞めたあとも守秘義務は続く」
桜井くんは、熱を少し冷まして手帳を開いた。
・手付を貸す/分割/後払い=信用の供与で誘引。禁止。ただし手付の“減額”はOK。
・誇大広告は、被害ゼロ・契約ゼロでも、出した時点で違反。
・守秘義務は、会社を辞めても続く。
| 行為 | 可否 |
|---|---|
| 「必ず値上がりする」など利益が確実と誤解させる断定 | 禁止(断定的判断の提供) |
| 手付を貸す・分割・後払いで契約に誘い込む | 禁止(信用の供与) |
| 手付の金額そのものを減額する | 可(信用の供与でない) |
| 著しく事実と違う/実際より著しく優良・有利に見せる広告 | 禁止(誇大広告。被害の有無を問わず違反) |
| 勧誘で相手を威迫する/断った相手にしつこく勧誘 | 禁止 |
| 業務上知った秘密を正当な理由なく漏らす(退職後も) | 禁止(守秘義務) |
この物語の“宅建ポイント”
- 利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為は禁止。将来の価格や利益を「必ず」「絶対」と断定してはならない。
- 手付について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為は禁止。手付の貸与・分割・後払いはこれにあたる。一方、手付金額そのものの減額は信用の供与にあたらない。
- 誇大広告等(著しく事実に相違する表示、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示)は禁止。実際に損害が生じたか、契約が成立したかを問わず、広告をした時点で違反が成立する。
- 勧誘に際して相手方を威迫すること、契約しない旨を示した相手への勧誘の継続などは禁止。
- 宅地建物取引業者やその使用人等は、正当な理由がなく、業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。宅建業を営まなくなった後(退職後)も同様。
この論点を、肢で確かめる業務上の規制は「言い過ぎ・やり過ぎ」を細かく問う定番。肢別ドリルの「宅建業法 → 業務上の規制」で、禁止行為の線引きを〇×で固めましょう。
肢別ドリルで解く →