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COLUMN / 宅建コラム

ニセの代理人でも、責任を負うとき
― 桜井くんと表見代理

権利関係・代理2026年7月30日

「代理権がないのに代理人のふりをした」——これが無権代理。ふつうは本人に効果が及びません。ところが、本人にも落ち度があり、相手方が“本物の代理人だ”と信じてもしかたないときは、本人が責任を負わされることがあります。それが表見代理。桜井くんの取引相手の話から見ていきましょう。

― 代理人と名乗る人物が現れた契約 ―

「先輩、こないだの売買、相手は『所有者の代理人』だと名乗ってました。でも実は、その人、代理権が無かったらしくて……。契約は無効ですよね?」

「原則はそうだ。代理権のない者がした契約(無権代理)は、本人に効果が及ばない。本人が追認しない限りな。——だが例外がある。本人の側にも落ち度があると、話が変わる。表見代理だ」

「ヒョウケンダイリ……?」

「“見かけ上の代理”という意味だ。本人が『こいつに代理権を与えた』と外に表示していたり、昔は代理人だった者が権限を超えたり、代理権が消えた後も名乗り続けたり——本人にも責められる事情があって、相手方が代理権ありと信じてもしかたないときは、本人が責任を負う。パターンは3つある」

「3つ、ですか」

「①代理権を与えたと表示した場合(授与表示)。②もともと何かの代理権はあったが、その範囲を超えて契約した場合(権限外の行為)。③代理権が消えた後に、まだあるかのように振る舞った場合(消滅後)。この3つだ」

「じゃあ、相手が『代理人だ』と言えば、いつでも本人が責任を負う?」

「そこが最重要だ。表見代理で相手方が保護されるのは、その相手方が“善意無過失”のときだけ。つまり、代理権が無いと知らず(善意)、知らないことに落ち度もない(無過失)場合に限る。相手が事情を知っていた(悪意)り、注意すれば気づけたのに見落とした(有過失)りすれば、表見代理は成立しない。②の権限外なら、相手方に『代理権がある』と信ずべき正当な理由が要る、という言い方もするな」

「なるほど。相手にも“うっかり”があれば守られないんですね」

「そういうことだ。ついでに、代理でよく問われる別の急所も言っておく。同じ人が売主と買主の両方を代理する『双方代理』や、代理人自身が契約の相手になる『自己契約』は、本人があらかじめ許していない限り、原則として“無権代理”として扱われる。利益がぶつかって、公平を欠くからな」

桜井くんは、3類型を手帳に書き出した。

― 桜井くんの手帳 ―
・無権代理は原則、本人に効果が及ばない(追認すれば別)。
・表見代理=本人に落ち度+相手方が善意無過失→本人が責任を負う。
・3類型:①授与表示 ②権限外の行為 ③代理権消滅後。
・相手方が悪意・有過失なら表見代理は不成立。
・自己契約・双方代理は、原則として無権代理扱い。
表見代理の3類型
類型どんな場面か
代理権授与の表示
(109条)
本人が「この人に代理権を与えた」と表示したが、実は与えていなかった
権限外の行為
(110条)
何らかの代理権(基本代理権)はあったが、その範囲を超えて契約。相手方に代理権ありと信ずべき正当な理由が必要
代理権消滅後
(112条)
かつては代理権があったが、それが消滅した後に代理人として行為した

「どの類型でも、共通の合言葉は『本人に落ち度、相手方は善意無過失』だ。ここを外すと、いくら“代理人”を名乗っても本人は責任を負わない。試験は、この善意無過失の要件をこっそり崩して誤りをつくってくる」

この物語の“宅建ポイント”

  • 無権代理行為は、本人が追認しない限り、原則として本人に効果が及ばない。表見代理が成立する場合には、本人が責任を負う。
  • 表見代理には、代理権授与の表示による表見代理(民法109条)、権限外の行為の表見代理(110条)、代理権消滅後の表見代理(112条)の3類型がある。
  • いずれの類型でも、相手方が保護されるには善意無過失であることを要する。相手方が悪意または有過失のときは表見代理は成立しない(権限外の行為では、代理権があると信ずべき正当な理由が必要)。
  • 自己契約・双方代理は、本人があらかじめ許諾した場合等を除き、原則として無権代理とみなされる(民法108条)。
  • 無権代理行為を本人が追認したときは、別段の意思表示がない限り、契約の時にさかのぼって効力を生ずる(民法116条)。

この論点を、肢で確かめる表見代理は「3類型」と「善意無過失」を突く定番。肢別ドリルの「権利関係 → 代理」で、〇×を繰り返して要件の崩しに気づく力を固めましょう。

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※本コラムは学習用の読み物です。表見代理・無権代理の細目は判例・改正により扱いが変わることがあります。受験・実務にあたっては最新の民法・判例をご確認ください。