不動産を売って利益(譲渡益)が出ると、譲渡所得として所得税がかかります。急所は「長期か短期か」の分かれ目と、マイホームを売ったときの大きな特別控除。カレンダーの“たった一日”で税率が倍近く変わることもあります。桜井くんの早合点から見ていきましょう。
「先輩、このお客さん、買ってからちょうど5年ちょっと。長期でいいですよね?」
「待て。数え方に落とし穴がある。長期か短期かは、売った“その年の1月1日”の時点で、所有期間が5年を超えているかで判定する。売った日で数えるんじゃない。だから年末に5年を過ぎていても、その年の1月1日時点でまだ5年以下なら短期扱いだ」
「税率はどれくらい違うんですか?」
「国税で、長期は15%、短期は30%。倍だ。しかも、これとは別に住民税もかかる。5年を超えてから売るか、その年の1月1日を待って売るかで、負担が大きく変わる。“譲渡年の1月1日で5年超”——この一行が命だ」
「マイホームを売るときは、税が軽くなる特例があると聞きましたが」
「ある。居住用財産の3,000万円特別控除だ。譲渡益から3,000万円を差し引ける。ありがたいのは、所有期間を問わないこと。短期でも使える。——ただし、誰に売るかで制限がある」
「身内に売っても使えますよね?」
「そこがひっかけだ。配偶者や直系血族(親・子など)といった特別関係者への譲渡には、この3,000万円控除は使えない。身内に安く“売ったことにして”控除を取る、といった抜け道を防ぐためだ」
「長く住んだ家だと、もっと有利になるとも聞きます」
「所有期間が10年を超える居住用財産なら、軽減税率も使える。6,000万円以下の部分の国税が10.21%などに下がる。しかも大事なのは、この軽減税率と3,000万円控除は“併用”できること。まず3,000万円を引いて、残りに軽い税率をかけられる。ここは『どちらか一方』と誤らせる肢が多い」
「住み替えで、次の家に買い換える場合は?」
「特定の居住用財産の買換え特例がある。ただしこれは税が消えるわけじゃない。“課税の繰延べ”——今回の課税を将来に先送りする仕組みで、3,000万円控除や軽減税率とは“選択”、つまり一緒には使えない。どちらが得か試算して選ぶ」
「相続した実家(空き家)を売る相談も来ています」
「その場合も、空き家(被相続人の居住用家屋)の3,000万円特別控除という別枠がある。一定の要件を満たせば、相続した実家を売ったときの譲渡益から3,000万円を控除できる。使える特例は、場面ごとに整理しておけ」
桜井くんは、頭の中を手帳で整理した。
・国税は長期15%・短期30%(別途、住民税もかかる)。
・居住用3,000万円控除=所有期間を問わず使える。ただし配偶者・直系血族など特別関係者への譲渡は不可。
・10年超の軽減税率(6,000万円以下の部分の国税10.21%等)は3,000万円控除と併用OK。
・買換え特例=課税の繰延べ。3,000万円控除・軽減税率とは選択(併用不可)。
・空き家(被相続人の居住用家屋)の3,000万円控除もある。
| 特例 | ポイント |
|---|---|
| 3,000万円特別控除 | 所有期間を問わず適用可。配偶者・直系血族など特別関係者への譲渡には使えない。 |
| 10年超の軽減税率 | 6,000万円以下の部分の国税10.21%等。3,000万円控除と併用できる。 |
| 特定の居住用財産の買換え特例 | 課税の繰延べ。3,000万円控除・軽減税率とは選択(併用不可)。 |
| 空き家(被相続人の居住用家屋)の3,000万円控除 | 相続した実家を売ったときの別枠の特別控除。 |
この物語の“宅建ポイント”
- 長期・短期は、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかで判定する(超なら長期、以下なら短期)。売却日で数えるのではない。
- 国税の税率は、長期15%・短期30%(このほかに住民税がかかる)。
- 居住用財産の3,000万円特別控除は所有期間を問わず適用できるが、配偶者・直系血族など特別関係者への譲渡には使えない。
- 所有期間10年超の居住用財産の軽減税率(6,000万円以下の部分の国税10.21%等)は、3,000万円控除と併用できる。
- 特定の居住用財産の買換え特例は課税の繰延べであり、3,000万円控除・軽減税率とは選択(併用不可)。このほか、空き家(被相続人の居住用家屋)の3,000万円特別控除もある。
この論点を、肢で確かめる譲渡所得は「長短の判定」と「特例の併用・選択」を突く定番。関連する改正や税の全体像は法改正まとめで、肢での定着は肢別ドリルの「税・その他 → 所得税(譲渡所得)」で固めましょう。
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