「もし〇〇できたら買う」「〇月〇日に払う」——契約に付く"もし"と"いつ"が、条件と期限です。効力がいつ生まれ、いつ失われるか。まだ決まらない間の"期待"はどこまで守られるか。地味に見えて肢の急所が多い論点を、桜井くんと解きほぐしましょう。
「先輩、お客さんが『銀行の融資が通ったら、この土地を買う』とおっしゃっています。これって、もう契約は成立しているんですか?」
「それが停止条件だ。停止条件付の法律行為は、条件が成就した"時"から効力を生ずる。融資が通った瞬間に、売買の効力がスタートする。逆に解除条件——『〇〇になったら契約は終わり』は、条件が成就した時から効力を失う」
「じゃあ、条件が通るか通らないか、まだ分からない間は、何もない状態ですか?」
「いや、そこが面白い。条件の成否が未定の間の当事者の権利(期待権)は、"処分・相続・保存・担保"にできる。まだ効力は出ていなくても、その"もしもの権利"を売ったり、相続したり、担保に入れたりできる。『未定の間は相続できない』は、よくある誤りだ」
「まだ成就していないのに、権利として扱えるんですね」
「そうだ。だから相手方は、その期待権を害してはいけない。条件付の権利をわざと踏みにじる行為(たとえば目的物を第三者に売って履行できなくする)をすれば、条件成就前でも損害賠償の対象になる」
「もし、片方が条件の成就をわざと邪魔したら?」
「そこは強力なルールがある。条件が成就すると不利益を受ける者が、故意にその成就を妨げたときは、相手方は"条件が成就したものとみなす"ことができる。ずるをして成就を潰した側は、成就した扱いにされてしまう」
「なるほど……。では"期限"のほうは?」
「期限は"必ず来る"のが条件との違いだ。いつ来るか確定しているのが確定期限、来るのは確実だがいつかは不明なのが不確定期限。そして期限は、原則として"債務者の利益"のために定めたものと推定される」
「債務者の利益、というと?」
「たとえば『1年後に返す』なら、債務者は1年間は返さなくていい。この期限の利益は、放棄できる——前倒しで返すのは自由だ。ただし放棄で相手方の利益を害することはできない。それに、破産手続開始の決定を受けたり、担保を壊したり減らしたりといった一定の事由があると、債務者は期限の利益を主張できなくなる(期限の利益の喪失)。『まだ期日前だ』と言えなくなるわけだ」
桜井くんは、条件と期限の要点を手帳に並べた。
・成否未定の間の権利(期待権)=処分・相続・保存・担保にできる。
・相手方は期待権を害せない→侵害は成就前でも損害賠償の対象。
・不利益を受ける者が故意に成就を妨害→相手方は"成就とみなす"ことができる。
・期限=確定期限/不確定期限(来るのは確実)。
・期限は債務者の利益と推定。放棄できる(相手方の利益は害せない)。
・破産手続開始の決定・担保の滅失等→期限の利益を喪失。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 停止条件 | 条件成就の時から効力を生ずる |
| 解除条件 | 条件成就の時から効力を失う |
| 成否未定の間の権利 | 期待権として処分・相続・保存・担保にできる(相手方は害せない) |
| 故意の成就妨害 | 相手方は条件が成就したものとみなすことができる |
| 期限の種類 | 確定期限/不確定期限(来るのは確実だが時期不明) |
| 期限の利益 | 債務者の利益と推定。放棄できる(相手方の利益は害せない)。破産手続開始の決定・担保の滅失等で喪失 |
この物語の“宅建ポイント”
- 停止条件付法律行為は条件が成就した時から効力を生じ、解除条件付法律行為は条件が成就した時から効力を失う。停止条件が成就しなければ、その法律行為の効力は生じない。
- 条件の成否が未定である間の当事者の権利義務(期待権)は、処分し、相続し、保存し、または担保とすることができる。「未定の間は相続できない」は誤り。相手方はこの期待権を害することができず、侵害すれば条件成就前でも損害賠償の対象となりうる。
- 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその成就を妨げたときは、相手方は条件が成就したものとみなすことができる。
- 期限には確定期限と不確定期限がある。不確定期限は、到来することは確実だがその時期が不明なもの。
- 期限は債務者の利益のために定めたものと推定され、期限の利益は放棄できるが、相手方の利益を害することはできない。破産手続開始の決定・担保の滅失等の一定の事由があると、債務者は期限の利益を主張できない(期限の利益の喪失)。
この論点を、肢で確かめる条件・期限は「成就の時から効力・期待権の処分相続・成就妨害のみなし・期限の利益」を突く権利関係の定番。肢別ドリルの「権利関係 → 条件・期限」で、〇×を繰り返して要点を固めましょう。
肢別ドリルで解く →