遠方のお客さんに、わざわざ来店してもらうのは大変——。いまはテレビ会議などのITを使って重要事項説明を行う「IT重説」が認められています。ただし、対面と同じ安心を確保するための“条件”がいくつも付いています。桜井くんのオンライン商談から、その急所を。
「先輩、今回の買主さん、県外にお住まいで来店が難しいそうです。もう電話で重要事項説明をパパッと済ませちゃっていいですか?」
「待て待て、桜井。電話だけの重要事項説明はダメだ。たしかにITを使った重説——“IT重説”は認められている。でも、それには守るべき条件がある」
「ITでよければ、逆に楽ですね。何が要るんですか?」
「まず大前提として、相手方の承諾だ。そのうえで、宅建士とお客さんが、双方向で映像も音声もやりとりできる環境——テレビ会議のような形でなきゃいけない。だから映像のない電話だけ、はアウトだ。お互いの顔と資料が見えて、その場で質問し合える状態が要る」
「なるほど、双方向の“映像+音声”ですね。ほかには?」
「重要事項説明書は、あらかじめお客さんに送っておく。画面ごしに口頭で読み上げるだけじゃなく、手元に同じ書面があって、一緒に見ながら進める。事前送付が要るんだ」
桜井くんは、ここぞと得意げに言った。「あ、じゃあ画面ごしですし、宅建士証の提示は省略でいいですよね。お客さんも承諾してくれてますし」
久保田さんは、はっきり首を振った。
「そこが一番の引っかけだ。IT重説でも、宅建士証の提示は必要。しかも相手方が承諾していても、省略はできない。画面上で士証をきちんと示して、お客さんがそれを視認できたことを確認する。ここは対面と同じだ」
「承諾があっても、士証はダメなんですね……。危なかった」
「それと、やっている最中に映像が乱れたり音声が途切れたりしたら、そのまま押し切るな。状態を確認しながら進めて、不備があれば中断する。聞こえていないのに説明が終わった、では意味がないからな」
「ちなみに、IT重説って売買のときだけですか?」
「いや、売買・交換・貸借のどれでもできる。場面を限定する話じゃない。要件さえ満たせば、画面ごしで説明していい」
桜井くんは、あわてて手帳を開いた。
・双方向で映像+音声のやりとりができる環境(電話だけは不可)。
・重要事項説明書は事前に送っておく(手元で一緒に見る)。
・宅建士証は画面で提示。承諾があっても省略できない!
・映像・音声に不備が出たら中断。売買・交換・貸借どれでも可。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 相手方の承諾 | ITを用いて説明することについて、あらかじめ承諾を得る |
| 双方向のやりとり | 映像・音声を相互に確認でき、双方向でやりとりできる環境(映像のない電話のみは不可) |
| 書面の事前交付 | 重要事項説明書等をあらかじめ相手方に交付(送付)しておく |
| 宅建士証の提示 | 宅建士証を画面で提示し、相手方が視認できたことを確認(承諾があっても省略不可) |
| 状態の確認 | 映像・音声の状態を確認しながら実施し、不備があれば中断する |
「桜井、コツはこうだ。『対面でやっていた安心を、画面ごしでも同じだけ確保する』。だから承諾・双方向・事前送付・士証提示・中断。これが対面の代わりの“骨組み”なんだ」
「便利だけど、手抜きの制度じゃない、ってことですね」
「そういうことだ。画面ごしでも、お客さんの判断材料をきちんと届ける。そこは変わらない」
この物語の“宅建ポイント”
- 相手方の承諾を得れば、テレビ会議等のITを用いて重要事項説明(IT重説)を行うことができる。売買・交換・貸借のいずれの取引でも可能。
- 宅建士と相手方が、図面等の書類・映像を視認でき、双方向で音声・映像のやりとりができる環境で行う。映像のない電話のみで重要事項説明を行うことはできない。
- 重要事項説明書等は、あらかじめ相手方に交付(送付)しておく。手元に同じ書面がある状態で説明を進める。
- 宅建士は宅地建物取引士証を提示し、相手方がそれを画面上で視認できたことを確認する。相手方の承諾があっても、士証の提示は省略できない。
- 映像・音声の状態を確認しながら実施し、不備が生じたときは中断する。説明の実質が確保できないまま進めることはできない。
この論点を、肢で確かめるIT重説は「電話だけで可?」「士証は省略できる?」を突く定番。肢別ドリルの「宅建業法 → 重要事項説明」で、〇×を繰り返してIT重説の条件を固めましょう。
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