前回、契約の“後”に渡す37条書面を学んだ桜井くん。今日は契約の“前”、重要事項説明(35条)の中身です。何を説明するのか——項目が多くて覚えきれない、という声が多い分野。でも3つの箱に分けて入れると、ぐっと見通しがよくなります。桜井くんの案内から。
「先輩、35条の説明する項目が多すぎて、覚えられません……」
「気持ちは分かる。でも、まず土台を確認だ。重要事項説明は、契約が成立する“前”に、宅建士が書面を交付して説明する。買うか借りるかを判断してもらうための情報だから、契約より前なんだ」
「説明するのは宅建士……専任の宅建士じゃないとダメですか?」
「そこはよく問われる。説明も、書面への記名も宅建士がするが、“専任”である必要はない。説明する場所にも法律上の制限はない。ここで“専任でなければ”“事務所で”と縛る肢は誤りだ」
「なるほど。それで、項目を覚えるコツは?」
「『共通』『貸借に特有』『区分所有に特有』の3つの箱に分けろ。まず売買でも貸借でも共通して説明するもの——登記された権利、法令に基づく制限、私道の負担、飲用水・電気・ガス・排水などの整備状況、未完成物件なら完成時の形状・構造、既存建物なら建物状況調査(インスペクション)の結果の概要。それに代金等以外に授受される金銭、契約の解除、損害賠償額の予定・違約金、手付金等の保全措置、代金等のローンあっせんと不成立のときの措置だ」
「たとえば、この物件、ガスの配管が引渡し後もガス会社の持ち物のままなんですが……」
「それは説明すべきだ。飲用水・ガス等の整備状況の一場面で、配管設備の所有権が引渡し後も第三者に残るなら、その旨を説明する。買主が後で買い取る負担を負いかねないからな」
「二つ目の箱、“貸借に特有”は?」
「借りる人ならではの関心事だ。台所・浴室・便所などの設備の整備状況、契約期間や契約の更新、用途その他の利用の制限、敷金など契約終了時に精算する金銭、管理の委託先など。買う人には要らないが、借りる人には要る、という項目だな」
「三つ目、“区分所有に特有”は、マンションですね」
「そうだ。マンション(区分所有建物)ならでは、を足す。敷地に関する権利、共用部分に関する規約の定め、専用使用権、通常の管理費用、計画的な維持修繕のための費用(修繕積立金)の規約の定めと既に積み立てられた額、管理の委託先など。管理を法人に委託しているなら、その法人の商号・名称と主たる事務所の所在地まで説明する」
「箱が3つ……。逆に、35条では説明しないものもありますか?」
「ある。ここは引っかけの宝庫だ。たとえば“危険負担”(天災など不可抗力による損害の負担)は、35条の重要事項説明の対象ではない。あれは契約後の37条書面のほう(定めがあれば書く任意的記載事項)だ。35条と37条の項目を入れ替える肢に気をつけろ」
桜井くんは、3つの箱を手帳に描いた。
・箱①共通:登記された権利/法令上の制限/私道負担/飲用水・電気・ガス・排水の整備状況/完成時の形状構造/建物状況調査の結果概要/解除・損賠予定・手付金保全・ローンあっせん 等。
・箱②貸借特有:設備の状況/契約期間・更新/利用制限/敷金の精算/管理委託先。
・箱③区分所有特有:敷地の権利/共用部分の規約/専用使用権/管理費・修繕積立金/管理委託先。
・危険負担は35条ではなく37条(入れ替え注意)。
| 箱 | 代表的な事項 |
|---|---|
| 共通(売買・貸借) | 登記された権利/法令に基づく制限/私道負担/飲用水・電気・ガス・排水等の整備状況/未完成物件の完成時の形状・構造/建物状況調査(インスペクション)の結果の概要/代金等以外の金銭/契約の解除/損害賠償額の予定・違約金/手付金等の保全措置/ローンあっせんと不成立時の措置 |
| 貸借に特有 | 台所・浴室等の設備の整備状況/契約期間・更新/用途その他の利用の制限/敷金等の精算/管理の委託先 |
| 区分所有に特有 | 敷地に関する権利/共用部分の規約/専用使用権/管理費・修繕積立金(規約の定めと積立額)/管理の委託先 |
「桜井、丸暗記より『共通に何を入れ、貸借と区分所有で“何を足すか”』の発想でいけ。足し算で覚えると、抜けにくい」
「3つの箱に仕分ける……。だいぶ整理できました」
この物語の“宅建ポイント”
- 重要事項説明(35条)は、契約が成立する前に、宅地建物取引士が書面を交付して説明する。説明も記名も宅建士が行うが、専任である必要はなく、説明の場所に法律上の制限はない。
- 売買・貸借に共通する事項=登記された権利、法令に基づく制限、私道の負担、飲用水・電気・ガス・排水等の整備状況、未完成物件の完成時の形状・構造、既存建物の建物状況調査の結果の概要、代金等以外に授受される金銭、契約の解除、損害賠償額の予定・違約金、手付金等の保全措置、ローンあっせんと不成立時の措置など。
- 貸借に特有の事項=設備の整備状況、契約期間・更新、用途その他の利用の制限、敷金等の精算、管理の委託先など。
- 区分所有建物に特有の事項=敷地に関する権利、共用部分に関する規約、専用使用権、管理費・修繕積立金(規約の定めと積立額)、管理の委託先など。
- 危険負担(天災その他不可抗力による損害の負担)は35条の対象ではなく、37条書面の任意的記載事項である。35条と37条の項目の入れ替えに注意する。
この論点を、肢で確かめる重要事項説明は「共通/貸借特有/区分所有特有」の仕分けと「35条か37条か」を突く定番。肢別ドリルの「宅建業法 → 重要事項説明(35条)」で、〇×を繰り返して3つの箱を固めましょう。
肢別ドリルで解く →