宅建業法で毎年いちばん問われるのが、この重要事項説明(35条)。覚えることが多くて嫌われがちですが、幹はシンプルです。今日は、契約直前のオフィスをのぞいてみましょう。
「先輩、明日の契約、準備バッチリです! 契約書に署名・押印してもらって、そのあと重要事項説明も一緒にサッと済ませちゃいますね」
入社半年の桜井くんが、意気揚々と段取りを説明する。相手はマンションを買うDさん。だが先輩の久保田さんは、静かに首を横に振った。
「桜井。順番が逆だ。重要事項説明は、契約が成立する“前”にやるんだよ」
「前、ですか? 契約と一緒じゃダメなんですか?」
「考えてみろ。重要事項説明は、買う人が『この物件を、この条件で買っていいか』を判断するための材料だ。ハンコを押したあとに『実は前面道路は私道でしてね』なんて言われても、もう遅いだろう」
桜井くんは、ハッとして段取り表を書き直した。
「じゃあ、明日は僕が説明しますね。宅建の勉強、してますし!」
久保田さんはコーヒーを置いた。
「桜井、お前宅建士証、持ってたか?」
「……あ。僕、まだ試験に受かっただけで、登録も交付も……」
「だよな。重要事項説明ができるのは宅地建物取引士だけ。しかも説明のときは、聞かれなくても宅建士証を相手に提示しないといけない。ここは私がやる」
「うぐ……。ちなみに先輩、説明する“場所”は事務所じゃなきゃダメなんですよね?」
「いや、そこは自由だ。重要事項説明を行う場所に決まりはない。喫茶店でもいい。相手の同意があれば、テレビ会議のような形でもできる。……でも桜井、一つ大事なことを教えておく」
久保田さんは、明日の相手方一覧を指さした。そこにはDさんの名前の横に、もう一件——不動産会社E社の名前があった。
「このE社は、投資用に別の部屋を買う宅建業者だ。相手がプロの宅建業者のときは、重要事項説明そのものは省略していい。書面を交付するだけでいいんだ」
「え、プロ相手なら説明しなくていいんですか?」
「そう。素人のDさんには手厚く説明。プロのE社には書面の交付だけ。守るべきは“何も知らない買い手”だからな。ただし——『書面をあげなくていい』わけじゃない。省けるのは“口頭の説明”だけ。ここ、試験の大好物だぞ」
桜井くんは、手帳に大きく書き込んだ。
・やるのは宅建士。士証を見せる。
・相手がプロ(業者)なら、説明は省略・書面はわたす。
翌日。久保田さんは宅建士証を胸の高さに掲げ、Dさんに一つずつ丁寧に説明していった。その落ち着いた声を、桜井くんは背筋を伸ばして聞いていた。
この物語の“宅建ポイント”
- 重要事項説明は、契約が成立するまでの間(=契約前)に行う。買主・借主が契約するかどうかを判断するための説明だから。
- 説明できるのは宅地建物取引士。説明の際は、請求がなくても宅建士証を相手方に提示しなければならない。
- 説明を行う場所に制限はない。相手方の承諾があればIT(テレビ会議等)による重要事項説明も可能。
- 相手方が宅地建物取引業者の場合は、書面の交付で足り、口頭の説明を省略できる。書面の交付自体は省略できない点に注意。
この論点を、肢で確かめる重要事項説明(35条)は、宅建業法で毎年ねらわれる最重要テーマ。肢別ドリルの「宅建業法 → 重要事項説明」で、〇×を繰り返して固めましょう。
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