まだ影も形もない建物を、先に広告して客を集めたい——気持ちは分かります。でも宅建業法は、「いつから広告していいか」「いつから契約していいか」を分けて縛っています。ここは混同しやすい定番。桜井くんの勇み足で整理しましょう。
― 建築確認申請中の新築マンション ―
桜井くんが、意気込んでチラシ入稿の準備をしていた。「先輩、来月建つマンション、今から『分譲開始!』って広告出しましょう。早いほうが客が集まります」
「桜井、まだ建築確認が下りていないだろう。工事完了前の物件は、開発許可や建築確認があった“後”でなければ、広告してはいけない。これは売る・貸す、自ら・代理・媒介、どの形でも同じだ」
「広告ぜんぶダメ……。じゃあ、広告はまだでも、契約だけ先に取るのは?」
「そこが引っかけどころだ。売買や交換の契約も、確認前は結べない。ただし——“貸借”の代理・媒介の契約なら、確認前でも結べる。広告は全部ダメ、でも契約は貸借の代理・媒介だけ例外、と覚えろ」
「広告と契約で、線が違うんですね」
「そうだ。表にするぞ」
開発許可・建築確認の「前」にできること
| 広告 | 契約 | |
|---|---|---|
| 売買・交換 (自ら・代理・媒介) | できない | できない |
| 貸借 (代理・媒介) | できない | できる |
「もう一つ、広告や注文を受けるときの基本だ。桜井、この物件、うちは“売主”か“仲介”か、チラシに書いたか?」
「あ……書いてないです」
「広告をするときは、取引態様の別——自ら売買するのか、代理か、媒介か——を明示しないといけない。しかもお客さんから注文を受けたときにも、あらためて明示する。広告に書いたから注文時は省略、はできない」
桜井くんは、チラシを引っ込めて手帳を開いた。
― 桜井くんの手帳 ―
・確認・許可の前は、広告は全部ダメ(売買も貸借も、自ら・代理・媒介も)。・契約は、貸借の代理・媒介だけOK。売買・交換はダメ。
・取引態様(自ら/代理/媒介)は、広告のときも、注文を受けたときも明示。
・誇大広告は、それ自体が禁止(別項目)。
この物語の“宅建ポイント”
- 工事の完了前は、開発許可・建築確認等があった後でなければ、その宅地建物の広告をしてはならない(広告開始時期の制限)。売買・交換・貸借のすべての態様に及ぶ。
- 同じく許可・確認等の前は、売買・交換の契約(自ら・代理・媒介)を締結できない(契約締結時期の制限)。ただし貸借の代理・媒介の契約は、この制限を受けない。
- 広告をするときは、取引態様の別(自ら売買・代理・媒介)を明示しなければならない。注文を受けたときにも、遅滞なく態様を明示する必要がある(広告での明示があっても省略できない)。
- 誇大広告等の禁止も広告規制の柱。著しく事実に相違する表示等は、被害の有無を問わず違反となる。
この論点を、肢で確かめる広告の規制は「広告と契約で線が違う」を突く定番。肢別ドリルの「宅建業法 → 広告の規制」で、〇×を繰り返して例外(貸借の代理・媒介)を固めましょう。
肢別ドリルで解く →※本コラムは学習用の読み物です。広告・契約締結時期の規制は法改正により変わることがあります。受験・実務にあたっては最新の宅建業法をご確認ください。