宅建・不動産資格チャンネル
COLUMN / 宅建コラム

マンションの多数決が、変わった
― 桜井くんと改正区分所有法

権利関係・区分所有法2026年7月29日

マンション(区分所有建物)の物事は、住人みんなの集会(総会)の多数決で決めます。毎年1問の定番ですが、令和8年度は約23年ぶりの大改正が目玉。「決まらないマンション」を動かすため、決議のルールが見直されました。まず基本を押さえ、そのうえで“何が変わったか”を桜井くんと見ていきましょう。

― 築古マンションの管理組合から相談 ―

「先輩、このマンション、建替えの話が出てるらしいんですけど、住人の何割が賛成すればいいんですか?」

「まず土台からだ。区分所有建物は、各自の部屋=専有部分、廊下や階段など共有する共用部分、そして土地を使う敷地利用権に分かれる。専有部分と敷地利用権は、規約に別段の定めがない限りバラバラに売れない(分離処分の禁止)。そのうえで、決議は“中身の重さ”で必要な賛成数が変わる」

久保田さんは、まず原則を書いた。

ふつうの決議(普通決議)は各過半数。管理者の選任などだ。規約の設定・変更や、共用部分の重大な変更は、原則として各4分の3以上。そして建替えは、原則として各5分の4以上——いちばん重い」

「その“各”って、なんですか?」

区分所有者の頭数と、議決権(専有部分の床面積の割合)の“両方”で数える、という意味だ。どちらも満たす必要がある。——さて、ここからが令和8年度の本番。この決議のしくみが、大きく変わったんだ」

桜井くんは背筋を伸ばした。

「なぜ変えたんですか?」

「“決まらないマンション”問題だ。所在不明や連絡のつかない持ち主がいると、その人も分母に数えるから、いくら賛成を集めても決議が成立しにくかった。そこを、こう手当てした」

「まず一つ目。裁判所の手続きを経て、所在不明の区分所有者を“分母から除外”できるようになった。母数が減るぶん、決議が格段に通りやすくなる。これが今回の核心だ」

「分母そのものを小さくできる、と。他には?」

「二つ目。共用部分の重大な変更は、原則は各4分の3以上のままだが、バリアフリー工事など一定の場合は各3分の2以上に緩和された。高齢化したマンションで工事を進めやすくするためだ」

「三つ目が、さっきの建替えですね」

「そうだ。建替えは原則、各5分の4以上のまま。ただし、耐震不足・外壁の剥落・給排水管の腐食など“危険な状態”が認められる場合は、各4分の3以上で建替えを決議できるようになった。危ない建物ほど動かしやすく、というわけだ」

「壊して建て直す以外の道は?」

「そこも新設された。一括売却や建物の取壊しといった“建替え以外の再生”も、各5分の4以上の多数決でできる。以前は全員の同意が必要で、事実上不可能だった。さらに、建替え決議のあと、区分所有者が終了請求をすれば6か月の経過で賃貸借が終了する制度もできた(賃借人は補償金の提供を受けるまで明渡しを拒める)」

「賃借人といえば……この部屋を借りている人は、集会で投票できるんですか?」

「できない。占有者(賃借人など)は、会議の目的に利害関係があれば集会で意見を述べられるが、議決権はない。票を持つのは区分所有者だ。『意見はOK、議決はNG』で覚えろ」

桜井くんは、改正の前後を手帳に整理した。

区分所有法の決議(令和8年度・改正のポイント)
決める内容賛成(区分所有者及び議決権の各)
普通決議(管理者の選任など)各過半数
規約の設定・変更・廃止各4分の3以上
共用部分の重大変更原則 各4分の3以上(バリアフリー等一定の場合は各3分の2以上に緩和)
建替え原則 各5分の4以上(危険な状態が認められる場合は各4分の3以上で可)
一括売却・建物取壊し等(新設)各5分の4以上(従来は全員同意)

※所在不明の区分所有者は、裁判所の手続きを経て決議の分母から除外できる(今回の大改正の核心)。

― 桜井くんの手帳 ―
・決議は「区分所有者の頭数」と「議決権」の“各”で数える。
・普通決議=各過半数/規約・共用部分の重大変更=原則各4分の3/建替え=原則各5分の4。
・【改正】所在不明者を裁判所手続で分母から除外できる(決まりやすく)。
・【改正】共用部分変更はバリアフリー等で各3分の2に緩和/建替えは危険な状態なら各4分の3。
・【改正】一括売却・取壊しも各5分の4で可能に(従来は全員同意)。
・占有者(賃借人)は意見OK・議決権なし。

この物語の“宅建ポイント”

  • 区分所有建物は専有部分・共用部分・敷地利用権に分かれ、専有部分と敷地利用権は規約に別段の定めがない限り分離処分できない。
  • 決議は区分所有者の頭数と議決権の「各」で数える。普通決議は各過半数、規約の設定・変更や共用部分の重大変更は原則各4分の3以上、建替えは原則各5分の4以上。
  • 【令和8年度の大改正】所在不明の区分所有者を、裁判所の手続を経て決議の分母から除外できる制度が新設された。
  • 【改正】共用部分の重大変更は、バリアフリー工事など一定の場合に各3分の2以上へ緩和された。建替えは、耐震不足等の危険な状態が認められる場合に各4分の3以上で決議できるようになった。
  • 【改正】一括売却・建物取壊し等の再生も各5分の4以上の多数決で可能となり(従来は全員同意)、建替え決議後の賃貸借終了制度も新設された。
  • 占有者(賃借人等)は、利害関係があれば集会に出席して意見を述べられるが、議決権はない。

改正点をまとめて確認区分所有法は令和8年度の目玉。改正の全体像は法改正まとめで、肢での定着は肢別ドリルの「権利関係 → 区分所有法」で。数字の入れ替えに強くなりましょう。

肢別ドリルで解く →
※本コラムは学習用の読み物です。区分所有法は約23年ぶりの大改正があり、施行時期や細目は今後の情報で変わることがあります。最新の改正内容は当サイトの法改正まとめおよび最新の区分所有法をご確認ください。