「宅建業をやるには免許が要る」——当たり前のようで、“どんなときに要るのか”を正確に言えると強い。自分の土地なら? 貸すだけなら? 全国で商売するなら大臣免許? 宅建業法の入口、免許の要否と区分を、桜井くんの雑談から。
桜井くんが、スマホを見ながら久保田さんに話しかけた。
「先輩、僕の伯父が、相続した広い土地を10区画くらいに分けて、一般の人に順番に売っていくらしいんです。自分の土地を売るだけだから、免許なんて要らないですよね?」
久保田さんはお茶を置いた。
「いや、それは免許が要る。桜井、宅建業の“業”は、不特定多数の人を相手に、反復継続して取引することを指すんだ。自分の土地でも、区画に分けて次々に売れば、立派な宅地建物取引業だ」
「え、自分の物なのに?」
「そう。“誰の物か”じゃなく、“どういう売り方か”で決まる。——じゃあ逆に聞くぞ。伯父さんが、その土地にアパートを建てて、自分が大家として貸すだけなら?」
「それは……さっきの話だと、貸すのも繰り返しますし、要る……?」
「そこが引っかけだ。自ら貸主になる賃貸(大家業)は、宅建業に当たらない。免許は要らない。何十室貸しても、自分が貸主として貸すだけなら不要だ。——ただし、他人の物件の貸し借りを代理・媒介するなら、それは業になるから免許が要る」
桜井くんは頭を抱えた。「売買と賃貸で、扱いが違うんですね……」
「表にするとこうだ」。久保田さんは紙ナプキンに書いた。
| 自ら当事者 | 代理・媒介 | |
|---|---|---|
| 売買・交換 | 要る | 要る |
| 貸借(賃貸) | 要らない (自ら貸主=大家業) | 要る |
「覚え方は『自ら貸主のマスだけが“不要”』。それ以外は全部要る、だ」
「わかりやすい……。ところで先輩、大きい会社は『大臣免許』ってやつですよね。全国で商売してるから?」
「またそこも誤解しやすい。大臣免許か知事免許かは、“事務所をどこに置いているか”で決まる。営業する範囲の広さじゃないんだ」
久保田さんは指を二本立てた。
「2つ以上の都道府県に事務所を置けば、国土交通大臣の免許。1つの都道府県の中だけに事務所があれば、その都道府県知事の免許。——だから、事務所が東京だけの会社が、北海道や沖縄のお客さんと商売しても、事務所が東京だけなら“東京都知事免許”のままだ。営業エリアは全国でもいい」
「事務所の“場所”で決まる。エリアの広さは関係ない、と」
「そうだ。そして、あとから他県に事務所を出したり、逆に他県の事務所をたたんで1県だけになったりして、事務所の設置状況が変わると『免許換え』が必要になる。免許の有効期間は5年。切れる前に更新すれば、また5年使える」
桜井くんは、紙ナプキンを財布にしまいながらメモした。
・自ら貸主(大家業)だけは免許不要。貸借の代理・媒介は要る。
・大臣か知事かは「事務所の所在」で決まる。営業エリアの広さは無関係。
・2県以上に事務所=大臣/1県だけ=知事。変われば免許換え。有効期間5年。
この物語の“宅建ポイント”
- 宅地建物取引業とは、宅地・建物の売買・交換、または売買・交換・貸借の代理・媒介を、業として(不特定多数に反復継続して)行うこと。自分の所有地でも、反復継続して分譲すれば免許が必要。
- 自ら貸主となる貸借(賃貸)は宅建業に当たらず、免許は不要。ただし他人の物件の貸借の代理・媒介は免許が必要(「自ら貸主」のケースだけが不要)。
- 大臣免許・知事免許の区別は、事務所の所在で決まる。2以上の都道府県に事務所を設置すれば国土交通大臣免許、1つの都道府県内にのみ事務所があればその都道府県知事免許。営業(取引)の相手方がどこにいるかは無関係。
- 事務所の設置状況が変わって免許権者が変わるときは、免許換えが必要。
- 免許の有効期間は5年。引き続き営業するには、有効期間満了前に更新(免許の更新申請)を行う。
この論点を、肢で確かめる免許は「要否」と「大臣・知事の区別」を手を変え品を変え問う定番。肢別ドリルの「宅建業法 → 免許」で、〇×を繰り返して判断の軸を固めましょう。
肢別ドリルで解く →