3人で一緒にお金を借りる——よくある話ですが、宅建では連帯債務として細かく問われます。急所は「一人に起きたことが、他の人にも効くのか(絶対効)/効かないのか(相対効)」。令和2年施行の民法で整理された、いまの正解を桜井くんと押さえましょう。
「先輩、AさんBさんCさんの3人が、D銀行から3000万円を連帯債務で借りるそうです。負担部分は平等の1000万ずつ、と聞きました」
「よし、まず基本だ。連帯債務では、それぞれが“全額”について履行の義務を負う。Dは、A一人に3000万円まるごと請求してもいいし、3人同時に、全部でも一部でも請求できる」
「え、Aさんの分は1000万じゃないんですか?」
「1000万は“内部の負担部分”だ。債権者に対しては全員が全額を背負う。ただしAが3000万払えば、債務は全員のぶん消滅する。そのうえでAは、BとCに負担部分に応じて1000万ずつ求償できる。払った人が、あとで内輪で精算するんだ」
「なるほど……。じゃあ先輩、Dが『Aさん、払って』って請求したら、その効果はBさんCさんにも及ぶんですか? たとえば時効が止まるとか」
「そこが一番の急所だ。連帯債務者の一人に“請求”しても、他の連帯債務者には効力が及ばない(相対的効力)。だからAへの請求で、BやCの時効の完成が止まることはない。時効の完成も、免除も、原則は相対的効力だ。令和2年施行の民法で、ここははっきり相対効に整理された」
「一人に効いても、みんなには効かない……。じゃあ“みんなに効く”ものもあるんですか?」
「ある。他の連帯債務者にも効力が及ぶ『絶対的効力』は、更改・相殺・混同の3つだ。たとえばAが自分のDに対する債権で相殺すれば、その分は全員のために債務が消える。AとDの間で更改があれば債権は全員のために消滅、AとDが混同すればAが弁済したものとみなされる。この3つだけ、と割り切って覚えろ」
「請求・免除・時効は相対、更改・相殺・混同は絶対、ですね」
「その通りだ。もう一つ、Bが相殺できる債権を持っているのにまだ使っていないとき、請求されたCはBの負担部分の限度で履行を拒める。ただしCが勝手にBの債権で相殺はできない。相殺できるのは債権者本人のBだけだ」
桜井くんは、対応表を手帳に写した。
・一人が弁済→全員消滅。弁済した人は他へ負担部分に応じて求償。
・絶対効(みんなに効く)=更改・相殺・混同の3つだけ。
・請求・免除・時効の完成は相対効(他の債務者に影響しない)。
| 事由 | 他の連帯債務者への効力 |
|---|---|
| 更改(債権者との間で) | 絶対的効力(債権は全員のために消滅) |
| 相殺の援用 | 絶対的効力(全員のために消滅) |
| 混同(債権者との間で) | 絶対的効力(弁済したものとみなす) |
| 履行の請求 | 相対的効力(他の債務者に及ばない) |
| 免除 | 相対的効力(他の債務者に及ばない) |
| 時効の完成 | 相対的効力(他の債務者に及ばない) |
「絶対効の3つは、どれも“債務そのものを消す・清算する”イメージだ。請求や免除、時効は、その一人と債権者の間の事情にとどまる。だから他の債務者には及ばない、と理屈で結びつけておけ」
「令和2年施行の民法で相対効に整理された、って先輩言ってましたよね。昔と違うんですか?」
「そこが試験に狙われる。改正で、履行の請求・免除・時効の完成が相対効に整理された。古い知識のまま“請求は絶対効”と答えると、いまはバツだ。最新のルールで固めろ」
この物語の“宅建ポイント”
- 各連帯債務者は債務の全額について履行の義務を負い、債権者は連帯債務者の一人または全員に対し、同時にまたは順次に、全部または一部の履行を請求できる。
- 一人が弁済すれば全員の債務が消滅し、弁済した者は他の連帯債務者に対して負担部分に応じた求償ができる。
- 他の連帯債務者にも効力が及ぶ絶対的効力は、更改・相殺・混同の3つ。相殺・更改は債権が全員のために消滅し、混同はその者が弁済したものとみなされる。
- 履行の請求・免除・時効の完成は、原則として相対的効力にとどまり、他の連帯債務者には影響しない(令和2年施行の民法で整理)。
- 相殺できる債権をもつ連帯債務者がこれを援用しない間、他の連帯債務者はその負担部分の限度で履行を拒めるが、他人の債権で相殺すること自体はできない。
この論点を、肢で確かめる連帯債務は「絶対効か相対効か」を入れ替えて問う定番。肢別ドリルの「権利関係 → 連帯債務」で、〇×を繰り返して更改・相殺・混同の3つを固めましょう。
肢別ドリルで解く →