前回は「建物を借りる」借家でした。今回は「土地を借りて、その上に自分の建物を建てる」借地の話です。建物は長く使うもの。だからこそ借地権は期間が長く、借主(借地権者)が手厚く守られています。桜井くんの土地取引から、数字と対抗力を整理しましょう。
土地のオーナーが桜井くんに尋ねた。「うちの土地を、家を建てたいという人に貸すんだ。期間は10年くらいでいいかな?」
「10年ですね」と桜井くんがメモしようとすると、久保田さんが止めた。「桜井、それは通らない。建物の所有を目的とする借地権は、存続期間が原則30年。これより短い期間を定めても、期間を定めなくても、30年になる。10年と書いても30年だ」
「30年より“長く”定めるのは?」
「長い分にはそのまま有効だ。40年でも50年でも、定めたとおりになる。短い方向にだけ、30年という下支えがある、と覚えろ」
「更新したら、また30年ですか?」
「そこは下がる。更新後の存続期間は、最初の更新が20年、2回目以降は10年(いずれも以上)だ。最初の更新で『15年』と定めても20年になる。数字が30→20→10と段になっている」
桜井くんは段の数字を書き留めた。
・長い期間はそのまま有効(40年なら40年)。
・更新後は 最初20年 → 2回目以降10年(いずれも以上)。
・短い定めは、30→20→10の下支えに引き上げられる。
「次は対抗力だ」と久保田さん。「桜井、借地人が『この土地を借りている』と、あとから土地を買った第三者に主張するには、何が要る?」
「賃借権の登記……ですか?」
「それがあれば一番だが、実際にはなかなか登記できない。だから借地借家法は別の道を用意した。借地上に、借地権者“本人名義”で登記した建物があれば、賃借権の登記がなくても第三者に対抗できる。土地の登記じゃなく、“建物の登記”で守るんだ」
「なるほど。建物の登記があればいいんですね」
「ただし引っかけがある。その建物の登記は“借地権者本人の名義”でなければならない。たとえば配偶者や子の名義で登記した建物では、対抗力は認められない。ここは判例が厳しく見ている」
「家族名義じゃダメ、本人名義で、と。もし借地契約が終わって更新もされなかったら、建てた家はどうなるんですか?」
「借地権者は、地主に対して“建物を時価で買い取ってくれ”と請求できる(建物買取請求権)。せっかくの建物を無駄に壊さずに済む仕組みだ」
桜井くんが続けて聞いた。「更新のない借地って、できないんですか? ずっと返してもらえないと、貸す方も不安で……」
「できる。それが定期借地権だ。期間が来たら更新なく確定的に終わる。三つ覚えろ」。久保田さんはホワイトボードに書き出した。
| 種類 | 存続期間・要件 |
|---|---|
| 普通借地権(当初) | 原則30年(短い定め・定めなしは30年、長い定めは有効) |
| 普通借地権(更新後) | 最初の更新20年/2回目以降10年(いずれも以上) |
| 一般定期借地権 | 存続期間50年以上・用途を問わない・書面で更新等がない旨を定める(公正証書に限らない) |
| 事業用定期借地権 | 存続期間10年以上50年未満・事業用建物に限る(居住用は不可)・公正証書で設定 |
| 建物譲渡特約付借地権 | 存続期間30年以上。期間経過後に建物を地主へ譲渡する特約 |
「一般定期は50年以上で、住居でも店舗でもよく、書面で定めればいい。事業用定期は10年以上50年未満で、必ず“事業用の建物”に限られ、公正証書でなければならない。桜井、社宅として従業員を住まわせる建物は、事業用定期借地権にできると思うか?」
「事業のため……いや、住むための建物だから、居住用ですね。できない、が正解ですか?」
「そのとおり。社宅は“居住の用”だから、事業用定期借地権にはできない。ここは毎年のように狙われる」
この物語の“宅建ポイント”
- 建物の所有を目的とする借地権の存続期間は原則30年。これより短い期間を定めても、期間を定めなくても30年となり、長い期間を定めればその期間となる。
- 更新後の存続期間は、最初の更新で20年、2回目以降は10年(いずれも以上)。これより短い定めは各20年・10年に引き上げられる。
- 借地上に借地権者本人名義で登記した建物があれば、賃借権の登記がなくても第三者に対抗できる。配偶者など他人名義の建物登記では対抗力は認められない。
- 借地契約が更新されず終了する場合などに、借地権者は建物買取請求権を行使できる。
- 一般定期借地権は存続期間50年以上・用途不問・書面(公正証書に限らない)で設定。事業用定期借地権は10年以上50年未満・事業用建物に限り・公正証書で設定する。居住用(社宅を含む)は事業用定期借地権にできない。建物譲渡特約付借地権は存続期間30年以上。
この論点を、肢で確かめる借地は「30・20・10の期間、本人名義の建物登記、定期借地の要件」を突く定番。肢別ドリルの「権利関係 → 借地借家法(借地)」で、〇×を繰り返して数字と対抗力を固めましょう。
肢別ドリルで解く →