アパートやマンションの部屋を「貸す・借りる」ときのルールが借地借家法の借家(借家権)です。民法の原則より、ぐっと借主が守られている。「大家さんの都合でいつでも追い出せる」わけではありません。桜井くんが担当する賃貸契約から、借主保護の急所を押さえましょう。
賃貸マンションのオーナーが、桜井くんに切り出した。「来年の更新のとき、あの借主さんには出ていってもらいたいんだ。契約期間が終わるんだから、更新しないと言えば済むよね?」
桜井くんは「はい、期間満了ですし」と答えかけたが、久保田さんが割って入った。「桜井、そこは慎重にな。普通の借家契約では、大家さん側から更新を拒むには“正当事由”が必要だ。『期間が来たから』だけでは出ていってもらえない。借主が生活の拠点を失う話だからな」
「正当事由……ですか。じゃあ、黙って期間が過ぎたらどうなるんですか?」
「そこが二つ目の急所だ。期間満了の“1年前から6か月前まで”の間に、更新しない旨などの通知をしないと、従前と同じ条件で更新されたことになる。これを法定更新という。しかも法定更新された後は、期間の定めのない契約になる」
「通知のタイミングを外すと、自動で更新されちゃうんですね」
「そうだ。『3か月前に通知すればいい』なんて思っていると間に合わない。1年前から6か月前の“窓”を逃すな」
桜井くんは、別の物件のことも気になってきた。「先輩、期間の定めがない契約になったら、もう一生解約できないんですか?」
「いや、解約の申入れはできる。ただし大家さん側からの解約申入れは、正当事由があったうえで、申入れから6か月で終了だ。借主側からなら3か月で終了。ここは期間が違うから並べて覚えろ」
桜井くんは手帳を開いた。
・更新拒絶等の通知は、満了の1年前〜6か月前に。しないと法定更新。
・法定更新の後は「期間の定めのない契約」になる。
・期間の定めなし→大家からの解約申入れは6か月、借主からは3か月で終了。
「もう一つ、借主の“強さ”を見せる論点だ」と久保田さん。「桜井、この借主さんは賃借権の登記をしていない。もし大家さんが建物を第三者に売ったら、借主は新しい所有者に『住み続けます』と言えると思うか?」
「登記がないなら……言えない気がします」
「言える。建物の“引渡し”を受けていれば、賃借権の登記がなくても、新しい所有者に対抗できる。借家では“引渡し”が対抗力になるんだ。しかもこれに反して借主に不利な特約(引渡しだけでは対抗できないとする等)は無効だ」
「鍵を受け取って住んでいれば守られる、と。分かりやすいです」
「あと二つ、細かいが出る。期間を“1年未満”と定めると、普通借家では『期間の定めのない賃貸借』とみなされる。半年契約のつもりでも、期間の定めなし扱いになるんだ。それから、借主が大家の同意を得て取り付けたエアコンなどの“造作”について、契約終了時に買い取ってと言える造作買取請求権がある。ただしこれは特約で排除できる。『造作は買い取らない』という特約は有効だ」
桜井くんは、借主保護の全体像を表にまとめた。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 更新拒絶(大家側) | 正当事由が必要。ないと拒めない |
| 更新拒絶等の通知 | 期間満了の1年前〜6か月前まで。しないと法定更新(従前と同一条件・期間の定めなし) |
| 解約申入れ(期間の定めなし) | 大家からは6か月、借主からは3か月で終了 |
| 対抗力 | 建物の引渡しで対抗できる(登記不要)。借主に不利な特約は無効 |
| 1年未満の期間 | 普通借家では期間の定めのない賃貸借とみなす |
| 造作買取請求権 | あり。ただし特約で排除できる |
この物語の“宅建ポイント”
- 賃貸人側からの更新拒絶・解約申入れには正当事由が必要。期間満了だけを理由に借主を退去させることはできない。
- 期間満了の1年前から6か月前までに更新拒絶等の通知をしないと、従前と同一の条件で更新される(法定更新)。法定更新後は期間の定めのない契約となる。
- 期間の定めのない建物賃貸借では、賃貸人からの解約申入れは6か月、賃借人からは3か月で終了する。(賃貸人側の解約申入れには正当事由も必要。)
- 建物の引渡しがあれば、賃借権の登記がなくても第三者に対抗できる。これに反して賃借人に不利な特約は無効。
- 普通借家で期間を1年未満と定めると、期間の定めのない建物賃貸借とみなされる。
- 造作買取請求権は任意規定であり、行使しない旨の特約(買取りを排除する特約)は有効。
この論点を、肢で確かめる借家は「正当事由・1年前〜6か月前・引渡しの対抗力」を入れ替えて問う権利関係の定番。肢別ドリルの「権利関係 → 借地借家法(借家)」で、〇×を繰り返して更新と対抗力を固めましょう。
肢別ドリルで解く →