「従業員が仕事中に起こしたこと」で、会社まで責任を問われる——それが使用者責任です。さらに、複数人が関わって損害が生じる共同不法行為とセットで問われるのが定番。誰が、誰に、いくら請求できるのか。桜井くんの“もしも”話で整理しましょう。
「先輩、もし従業員が仕事中にミスして、お客さんにケガをさせたら……悪いのは本人ですよね。会社は関係ない?」
「関係ある。それが使用者責任だ。ある事業のために他人を使用する者は、その被用者が“事業の執行について”第三者に加えた損害を、賠償する責任を負う。仕事のうえでの加害なら、雇っている会社(使用者)も責任を負うんだ」
「じゃあ、本人(被用者)は責任を免れるんですか?」
「いや、被用者本人も、自分の不法行為として責任を負う。使用者が責任を負うからといって、本人が免罪されるわけじゃない。被害者は、会社にも、本人にも請求できる」
「会社が先に全額払ったら、あとで本人に取り返せますか?」
「取り返せる。使用者は、賠償した後で被用者に“求償”できる。ただし全額ではない。損害の公平な分担という見地から、信義則上“相当と認められる限度”に制限される。会社は本人を使って利益を上げている以上、リスクも一定は負え、という考え方だ。だから『資力があれば常に全額を本人から回収できる』は誤りだぞ」
「逆に、本人が先に払ったら?」
「これも大事だ。第三者に賠償した被用者から、会社(使用者)へ“逆求償”することも認められている。近年の判例で確認された考え方だ。行き来はどちらもあり得る、と押さえろ」
「なるほど……。もし、加害者がうちの従業員だけじゃなく、外の第三者と二人がかりだったら?」
「そこで共同不法行為だ。数人が共同の不法行為で他人に損害を加えたときは、各自が“連帯して”賠償の責任を負う。被害者は、関わった加害者の“誰にでも”全額を請求できる。——そして会社が全額を払ったら、もう一人の第三者に対しては、両者の過失割合に応じた負担部分について求償できる」
桜井くんは、お金の流れを矢印で書き込んだ。
・被用者本人も不法行為責任を負う(免罪されない)。被害者は会社にも本人にも請求可。
・使用者→被用者の求償は「信義則上相当な限度」に制限(常に全額ではない)。
・被用者→使用者の「逆求償」も認められる。
・共同不法行為=各自が連帯して賠償(被害者はどの加害者にも全額請求できる)。
| 場面 | 結論 |
|---|---|
| 被害者が請求する相手 | 使用者(会社)にも、被用者本人にも請求できる |
| 使用者 → 被用者の求償 | できるが信義則上相当な限度に制限(全額ではない) |
| 被用者 → 使用者の逆求償 | 相当と認められる額についてできる |
| 共同不法行為者どうし | 各自が連帯して賠償。払った者は過失割合に応じ他へ求償 |
この物語の“宅建ポイント”
- ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(使用者責任)。被用者本人も不法行為責任を免れず、被害者は使用者・被用者のいずれにも請求できる。
- 使用者は、被害者に賠償した後、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度で、被用者に求償できる。常に全額を回収できるわけではない。
- 第三者に賠償した被用者から使用者への逆求償も、相当と認められる額について認められる。
- 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯して賠償の責任を負う(共同不法行為)。被害者はいずれの加害者にも全額を請求できる。
- 使用者が被害者に全額を賠償したときは、他の共同不法行為者(第三者)に対し、その過失割合に応じた負担部分について求償できる。
この論点を、肢で確かめる使用者責任は「求償の制限」と「連帯して賠償」を突く定番。肢別ドリルの「権利関係 → 不法行為」で、〇×を繰り返してお金の向きを固めましょう。
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