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COLUMN / 宅建コラム

登記がなくても、勝てる相手がいる
― 桜井くんと対抗問題の例外

権利関係・物権変動2026年7月30日

「不動産は、登記した者が勝つ」——最初に習うこの原則、じつは例外があります。相手によっては、登記がなくても所有権を主張できるのです。誰が相手なら登記が要らないのか。ここは権利関係の得点源。桜井くんの素朴な疑問から整理しましょう。

― 二重譲渡のトラブル相談 ―

「先輩、不動産は“先に登記した者が勝つ”んですよね。じゃあ登記が無い人は、いつでも負けなんですか?」

「そこが今日のヤマだ。原則はそのとおり。不動産の物権変動は、登記をしないと第三者に対抗できない(民法177条)。二重譲渡なら、先に登記した方が勝つ。でもな桜井、“登記がなくても対抗できる相手”が、ちゃんといるんだ」

「登記が無くても勝てる相手……。どんな人ですか?」

「まず一つ目。無権利者だ。たとえば、権利も何もないのに勝手に自分名義の登記をしている者。日本の登記には“公信力”がない——登記を信じて取引しても、それだけでは権利は手に入らない。だから無権利者は、こちらが登記していなくても対抗できる相手じゃない。抹消を求められる」

「登記を信じても守られない……公信力がないって、そういうことですか」

「そうだ。ついでに言うと、不動産には“即時取得”もない。即時取得は動産だけの制度だからな。二つ目、不法占拠者だ。何の権原もなく土地に居座っている者。こういう相手には、登記が無くても『出て行け(明渡せ)』と言える。不法占拠者は177条の『第三者』にあたらないんだ」

「権利のない人・不法に居座る人には、登記なしでもいける、と」

「その調子だ。三つ目が引っかけの本命——背信的悪意者だ。桜井、『こっちが先に買ったのを知っていた(悪意の)第二の買主』には、登記が無くても勝てると思うか?」

「知ってて買ったんだから……ずるいし、勝てそうな気がします」

「ひっかかったな。単に“知っていた”だけの悪意者は、177条の『第三者』として保護される。だから登記の先後で決まる。先に登記した方が勝つ。——ところが、その悪意が“信義に反する”ほど悪質な『背信的悪意者』になると話は別だ。背信的悪意者は177条の第三者にあたらず、登記が無くても対抗できる。単なる悪意はダメ、背信的悪意ならOK。ここが毎年問われる」

桜井くんは、線を引きながら手帳に書き込んだ。

― 桜井くんの手帳 ―
・原則:不動産の物権変動は登記が対抗要件(177条)。二重譲渡は登記の先後。
・でも“登記なくして対抗できる相手”がいる。
 ①無権利者(登記に公信力なし・不動産に即時取得なし)
 ②不法占拠者・不法行為者(明渡し・損害賠償を登記なく請求できる)
 ③背信的悪意者(=信義に反する悪質な者。※単なる悪意者はダメ・登記の先後)
登記がなくても対抗できる相手/できない相手
相手登記なしで対抗
無権利者(勝手に登記した者など)できる(公信力なし)
不法占拠者・不法行為者できる(177条の第三者でない)
背信的悪意者できる(177条の第三者でない)
単なる悪意の第二買主できない(登記の先後で決まる)
善意の第二買主できない(登記の先後で決まる)

「もう一つ、時間の“前後”でも登記の要否が変わる」。久保田さんは続けた。「たとえば売買を取り消したり取得時効が完成したりしたとき——その“前”に現れていた第三者には、原則として登記がなくても対抗できる。ところが、その“後”に現れた第三者とは対抗問題になって、登記の先後で決まる。前か後か、で線が引かれるんだ」

「取消しや時効の“あと”に出てきた人とは、結局スピード勝負(登記)になるんですね」

「そういうことだ。細かい応用は判例が積み重なっているが、まずは『無権利者・不法占拠者・背信的悪意者には登記なくして対抗できる』『単なる悪意者は第三者』『取消し・時効は前後で分かれる』——この骨格を体に入れておけ」

この物語の“宅建ポイント”

  • 不動産の物権変動は、登記をしなければ第三者に対抗できない(民法177条)。二重譲渡では、先に登記を備えた者が優先する。
  • 無権利者には、登記がなくても対抗できる。日本の登記に公信力はなく、不動産に即時取得の適用もない。無権利者名義の登記は抹消を求められる。
  • 不法占拠者など正当な権原なく占有する者は、民法177条の「第三者」に当たらない。所有権を取得した者は、登記がなくても明渡し等を請求できる。
  • 背信的悪意者も177条の「第三者」に当たらず、登記がなくても対抗できる。一方、単に事情を知っていただけの悪意者は「第三者」として保護され、登記の先後で決まる。
  • 取消しや取得時効の「前」に現れた第三者には登記なくして対抗できるが、「後」に現れた第三者とは対抗問題となり、登記の先後で決まる。

この論点を、肢で確かめる対抗問題の例外は「誰が相手か」を細かく入れ替えて問う定番。肢別ドリルの「権利関係 → 物権変動」で、〇×を繰り返して“登記が要る相手/要らない相手”を仕分けましょう。

肢別ドリルで解く →
※本コラムは学習用の読み物です。対抗問題の細目は判例・法改正により変わることがあります(相続と登記の取扱いなど)。受験・実務にあたっては最新の民法・判例をご確認ください。