宅建士の登録を、別の都道府県に“引っ越し”させる手続——それが登録の移転です。「するかしないか」「いつできて、いつできないか」が細かく問われます。“任意”“住所だけでは動かせない”の二つが最大の急所。桜井くんの引っ越し話から見ていきましょう。
「先輩、来月、隣の乙県に引っ越すんです。僕の宅建士の登録、甲県のままですけど……乙県に移さなきゃいけませんよね?」
「桜井、それは早とちりだ。二つ間違えてる。まず一つ目——単に“住所”を移しただけでは、登録の移転はできない。登録の移転ができるのは、登録している知事の管轄“外”に所在する事務所に勤務し、または勤務しようとするときだ。勤め先が別の県に変わるとき、の話なんだ。引っ越しただけじゃダメだ」
「あ……住所じゃなくて、勤務先の場所なんですね。ちなみに住所が変わったら、何もしなくていいんですか?」
「それは“変更の登録”という別の手続で対応する。登録の移転とは別物だ。混ぜるな。——で、二つ目の間違い。仮にお前が乙県の事務所で働くことになったとして、登録の移転は“しなければならない”ものだと思うか?」
「勤務先が変わるなら、義務なのかと……」
「違う。登録の移転は“任意”だ。『することができる』であって、義務じゃない。乙県の事務所で働いても、甲県の登録のままで仕事は続けられる。専任の宅建士になる場合でも、移転が義務づけられるわけじゃない。ここは毎年狙われるぞ」
「任意……。移すときは、どこに申請するんですか?」
「今登録している甲県知事を“経由”して、移転先の乙県知事に申請する。いきなり乙県へ直接、じゃない。——ただし、できない場合が一つある。事務の禁止の処分を受けている間は、登録の移転を申請できない。禁止の期間が満了するまで待つことになる」
「移転すると、宅建士証はどうなりますか?」
「いい質問だ。登録の移転をすると、従前の宅建士証は効力を失う。そして移転先の乙県知事が、新しい宅建士証を交付する。ここで引っかけ——その新しい証の有効期間は、あらためて5年になるわけじゃない。“従前の宅建士証の残りの期間”をそのまま引き継ぐ。移転で有効期間がリセットされて延びる、と思わせるのが定番の誤りだ。あと、この移転にともなう交付では、移転先の知事が指定する講習を受け直す必要はない」
桜井くんは、思い込みを一つずつ消しながら書き直した。
・単なる住所変更ではできない(それは“変更の登録”)。
・“任意”。しなければならない、ではない(専任になる場合でも義務でない)。
・今の知事を“経由”して、移転先の知事に申請。
・事務禁止の処分中は申請できない(期間満了まで)。
・移転先の知事が新しい宅建士証を交付。有効期間は“従前の残り”(5年に延びない)。
| ケース | 結論 |
|---|---|
| 住所を他県に変えただけ | 移転できない(変更の登録で対応) |
| 管轄外の事務所に勤務・勤務しようとする | 移転を申請できる(任意) |
| 専任の宅建士になるから移転すべき? | 義務ではない(任意) |
| 申請の経路 | 今の知事を経由して移転先の知事へ |
| 事務の禁止処分を受けている間 | 申請できない |
| 移転後の宅建士証の有効期間 | 従前の残存期間(5年に延びない) |
この物語の“宅建ポイント”
- 登録の移転は、登録している都道府県知事の管轄外に所在する事務所に勤務し、または勤務しようとするときに申請できる。単に住所を変更しただけでは登録の移転はできない(住所変更は変更の登録の対象)。
- 登録の移転は任意であり、義務ではない。「することができる」ものであって、勤務先が他県になっても、専任の宅建士になる場合でも、しなければならないわけではない。
- 申請は、現に登録している都道府県知事を経由して、移転先の都道府県知事に対して行う。
- 事務の禁止の処分を受けている間は、登録の移転を申請できない。禁止の期間が満了するまで申請できない。
- 登録の移転をすると従前の宅地建物取引士証は効力を失い、移転先の知事が新たに交付する。その有効期間は従前の宅建士証の残存期間であり、あらためて5年になるわけではない。移転に伴う交付では、移転先の知事が指定する講習の受講は不要。
この論点を、肢で確かめる登録の移転は「任意か義務か」「住所か勤務先か」「有効期間」を突く定番。肢別ドリルの「宅建業法 → 宅地建物取引士」で、〇×を繰り返して急所を固めましょう。
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