相続の準備として、お客さんから「遺言を書きたい」と相談されることがあります。書き方を一つ間違えると、せっかくの意思が無効になることも。遺言は、方式が命の論点です。年齢・方式・検認・撤回——桜井くんと基本を押さえましょう。
「先輩、遺言って、何歳から書けるんですか? 未成年はダメですよね」
「そこが引っかけどころだ。遺言は、満15歳に達していればできる。未成年でも、15歳以上なら、親の同意なしに単独で有効な遺言ができる。契約の年齢とは別の物差しなんだ」
「15歳……。書き方にも決まりが?」
「厳格だぞ。まず自筆証書遺言。これは本文の全文・日付・氏名を、遺言者が“自書”して押印する。パソコンで打った本文はダメ、日付が『吉日』みたいに特定できないのもダメだ」
「全部手書き……。財産の一覧まで手書きは大変そうですね」
「そこは緩められた。添付する“財産目録”は、パソコン等で作成してもよい。ただしその目録の各ページに署名押印が要る。本文は自書、目録は例外、と分けて覚えろ」
「もう一つ、公証役場でつくるやつは?」
「公正証書遺言だ。証人2人以上の立会いのもと、公証人が作成する。手間はかかるが、専門家が関与するぶん確実だ。——さらに大事なのが“検認”の要否だ。桜井、自筆証書遺言は、原則、家庭裁判所の“検認”が必要。でも公正証書遺言は検認がいらない」
「検認って、何のためですか?」
「遺言書の形式や状態を家庭裁判所が確認して、後の偽造・変造を防ぐ手続きだ。公正証書は公証人が原本を保管しているから、あらためて検認する必要がない。——ちなみに、自筆証書でも法務局で保管する制度を使えば検認は不要になる。細かい制度は動くから、そこは最新の扱いを確認しろ」
「もし気が変わったら、書き直せますか?」
「もちろんだ。遺言は、いつでも撤回できる。しかも前の遺言と後の遺言が食い違う部分は、後の遺言で撤回したものとみなされる。日付の新しいほうが勝つ、と覚えておけばいい。だから日付が超重要なんだ」
桜井くんは、方式の違いを手帳に表で整理した。
・自筆証書=全文・日付・氏名を自書+押印。財産目録はPC可(各ページ署名押印)。
・公正証書=証人2人以上+公証人。
・検認:自筆証書は原則必要/公正証書は不要(法務局保管の自筆証書も不要)。
・遺言はいつでも撤回できる。抵触する前の遺言は、後の遺言で撤回とみなす(新しい日付が勝つ)。
| 作り方 | 検認 | |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 全文・日付・氏名を自書し押印(財産目録はPC可・各ページ署名押印) | 原則必要 |
| 公正証書遺言 | 証人2人以上の立会いで公証人が作成 | 不要 |
| 秘密証書遺言 | 内容を秘密にして存在だけを証明してもらう | 必要 |
この物語の“宅建ポイント”
- 満15歳に達した者は、遺言をすることができる。未成年者でも、15歳以上であれば単独で有効な遺言ができる。
- 自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自書し、押印する。相続財産の目録を添付する場合、その目録はパソコン等で作成できるが、各ページに署名押印が必要。
- 公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもとで作成し、家庭裁判所の検認は不要。これに対し、自筆証書遺言・秘密証書遺言は原則として検認が必要(法務局保管の自筆証書遺言は検認不要)。
- 遺言はいつでも撤回でき、前の遺言が後の遺言と抵触する部分は、後の遺言で撤回したものとみなされる。
この論点を、肢で確かめる遺言は「15歳・自書・検認の要否・撤回」を入れ替えて問う相続の定番。肢別ドリルの「権利関係 → 相続(遺言)」で、〇×を繰り返して方式の違いを固めましょう。
肢別ドリルで解く →