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COLUMN / 宅建コラム

登記を信じても、守られないことがある
― 桜井くんと不動産登記法

権利関係・不動産登記法2026年7月29日

「登記を見れば、その不動産の“本当の持ち主”が分かる」——多くの人がそう思っています。ところが宅建で問われるのは、その常識を裏切る一点。登記を信じたのに守られないことがあるのです。不動産取引の土台になる不動産登記法を、桜井くんと押さえましょう。

― 登記簿を前にした売買の確認 ―

「先輩、この土地、登記名義はAさんです。だからAさんから買えば、確実に自分のものになりますよね」

「桜井、そこが最大の落とし穴だ。不動産の登記には“公信力”がない。つまり登記名義人を信じて取引しても、その人が本当は権利者でなければ、原則として権利を取得できない。もしAの登記が実は無効なもので、真の所有者が別にいたら、Aから買った人は所有権を得られないことがある」

「登記を信じただけじゃ、守られない……。じゃあ登記は何のためにあるんですか?」

「登記は“対抗要件”だ。二重譲渡のように権利を争う相手が現れたとき、『先に登記した方が勝つ』という優劣を決める役割がある。ただし“信じた人を守る(=公信力)”役割まではない。ここを混同するな」

桜井くんは手帳に書いた。

― 桜井くんの手帳 ―
・登記に「公信力」はない。
・登記名義人を信じて買っても、真の権利者でなければ原則取得できない。
・登記は「対抗要件」。争う相手が出たとき、先に登記した方が優先。
・「対抗力あり」=「信じた人を守る」ではない。

「次は登記の“中身の分類”だ」と久保田さん。「登記簿は大きく二つに分かれる。土地建物の物理的な状況を表す“表示に関する登記”(表題部)と、所有権や抵当権など権利関係を表す“権利に関する登記”だ」

「物理的な状況、というと?」

「所在・地番・地目・地積、建物なら構造や床面積だ。これらに変更があったときは、一定期間内に変更の登記を申請する義務がある——たとえば地目や地積が変われば、原則としてその日から1か月以内だ。表示に関する登記には、こうした申請義務がある点が特徴だな」

「権利の方は、また別ですか」

「そうだ。それと、いま急ぎで所有権の移転登記まではできないが、順位だけ先に確保したい——そんなときに使うのが仮登記だ。本登記の“予約席”のようなもので、順位を保全する。仮登記は、登記義務者の承諾があるとき等は、仮登記権利者が単独で申請できる

「共同申請が原則だけど、承諾があれば一人でも、と。相続のときの登記はどうなんですか? 最近ルールが変わったと聞きました」

「よく知ってるな。相続による所有権の取得について、令和6年4月1日から登記申請が義務化された。長らく相続登記がされずに“所有者不明土地”が増えた反省からだ。相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得る。実務でも受験でも、押さえておく改正だ」

「登記の“義務化”って、相続だけですか?」

「いや、もう一つある。令和8年度で狙われるのが、住所・氏名の変更登記の義務化だ。登記名義人の住所や氏名が変わったときは、2年以内に変更登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料。相続登記の“3年・10万円”と、住所氏名変更の“2年・5万円”——数字がよく入れ替えて問われるから、セットで覚えろ。どちらも『所有者不明土地』を防ぐ流れだ」

桜井くんは、登記の全体像を表にした。

不動産登記のキホン
項目内容
公信力ない。登記名義人を信じて取引しても、真の権利者でなければ原則取得できない
登記の役割対抗要件(争う相手が出たとき、先に登記した方が優先)
表示に関する登記物理的状況(所在・地番・地目・地積・構造等)。変更があれば一定期間内に申請義務
権利に関する登記所有権・抵当権など権利関係
仮登記順位を保全。登記義務者の承諾があるとき等は仮登記権利者が単独申請できる
相続登記の義務化令和6年4月1日〜。取得を知った日から3年以内/正当な理由なく怠ると10万円以下の過料
住所・氏名変更登記の義務化住所・氏名の変更から2年以内/正当な理由なく怠ると5万円以下の過料

この物語の“宅建ポイント”

  • 不動産の登記には公信力がない。登記名義人を真の権利者だと信じて取引しても、その名義人が権利者でなければ原則として権利を取得できない。
  • 登記は対抗要件である。二重譲渡などで権利を争う場合、先に登記を備えた方が優先する。「信じた人を守る(公信力)」役割はない点と区別する。
  • 登記は、表示に関する登記(表題部=物理的状況)と権利に関する登記(権利関係)に分かれる。表示に関する登記には、変更等があった場合に一定期間内に申請する義務がある(地目・地積の変更は原則1か月以内)。
  • 仮登記は順位を保全するための登記で、登記義務者の承諾があるとき等は仮登記権利者が単独で申請できる。
  • 相続による所有権の取得については、令和6年4月1日から登記申請が義務化された。相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となり得る。
  • 登記名義人の住所・氏名の変更登記も義務化された。変更があったときは2年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象となり得る(相続登記の「3年・10万円」と、住所氏名変更の「2年・5万円」を区別)。

この論点を、肢で確かめる不動産登記法は「公信力なし・表示と権利・仮登記・登記義務化」を突く定番。相続登記・変更登記の義務化は法改正まとめでも整理。肢での定着は肢別ドリルの「権利関係 → 不動産登記法」で。

肢別ドリルで解く →
※本コラムは学習用の読み物です。不動産登記法は相続登記の申請義務化など近年改正が続いており、手続・期間・過料の要件が変わることがあります。受験・実務にあたっては最新の不動産登記法・施行令をご確認ください。