Aは、自己所有の甲建物(居住用)をBに賃貸し、引渡しも終わり、敷金50万円を受領した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 賃貸借が終了した場合、AがBに対し、社会通念上通常の使用をした場合に生じる通常損耗について原状回復義務を負わせることは、補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているなど、その旨の特約が明確に合意されたときでもすることができない。
- Aが甲建物をCに譲渡し、所有権移転登記を経た場合、Bの承諾がなくとも、敷金が存在する限度において、敷金返還債務はAからCに承継される。
- BがAの承諾を得て賃借権をDに移転する場合、賃借権の移転合意だけでは、敷金返還請求権(敷金が存在する限度に限る。)はBからDに承継されない。
- 甲建物の抵当権者がAのBに対する賃料債権につき物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合においても、その賃料が支払われないまま賃貸借契約が終了し、甲建物がBからAに明け渡されたときは、その未払賃料債権は敷金の充当により、その限度で消滅する。
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誤り。賃借物の通常の使用収益によって生じた損耗(通常損耗)及び経年変化については、賃借人は原状回復義務を負わないのが原則である(民法621条かっこ書)。もっとも、通常損耗分を賃借人の負担とする特約は、その旨が契約書の条項自体に具体的に明記されるなどして明確に合意されていれば有効とされる(判例)。したがって、特約が明確に合意されたときでも負わせることが「できない」とする本肢は誤りであり、本問の正解である。
正しい。賃貸人たる地位が旧賃貸人から新所有者に移転した場合、敷金の返還に係る債務も新賃貸人に承継される(民法605条の2第4項)。賃借人Bの承諾は不要であるから、AがCに甲建物を譲渡して登記を経れば、敷金が存在する限度で敷金返還債務はCに承継される。本肢は正しい。
正しい。賃借人が適法に賃借権を譲渡(移転)した場合、旧賃借人が差し入れた敷金に関する権利義務は、原則として新賃借人に承継されず、賃貸人は旧賃借人に対し敷金を返還すべきものとされる(民法622条の2第1項2号、判例)。したがって、賃借権の移転合意だけでは敷金返還請求権はBからDに承継されない。本肢は正しい。
正しい。敷金は、賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたときに、未払賃料等の債務に当然に充当される(民法622条の2第1項1号)。抵当権者が物上代位により賃料債権を差し押さえていても、その後賃料が支払われないまま賃貸借が終了し明渡しがされたときは、明渡しの時に存在する未払賃料債権は敷金の充当によりその限度で消滅する(判例)。本肢は正しい。
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