Aは、Bに対し建物を賃貸し、月額10万円の賃料債権を有している。この賃料債権の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- Aが、Bに対する賃料債権につき支払督促の申立てをし、さらに期間内に適法に仮執行の宣言の申立てをしたときは、消滅時効は更新される。
- Bが、Aとの建物賃貸借契約締結時に、賃料債権につき消滅時効の利益はあらかじめ放棄する旨約定したとしても、その約定に法的効力は認められない。
- Aが、Bに対する賃料債権につき内容証明郵便により支払を請求したときは、その請求により消滅時効は更新される。
- Bが、賃料債権の消滅時効が完成した後にその賃料債権を承認したときは、消滅時効の完成を知らなかったときでも、その完成した消滅時効の援用をすることは許されない。
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正しい。支払督促は「裁判上の請求等」に準ずるものとして、その事由が終了する(確定判決又はそれと同一の効力を有するものによって権利が確定する)までの間は時効の完成が猶予され、権利が確定したときは、その事由の終了の時から新たに時効が進行を始める(消滅時効が更新される。民法147条1項2号・2項)。支払督促の申立てをし、適法に仮執行の宣言の申立てをして支払督促が確定すれば、時効は更新される。
正しい。時効の利益は、あらかじめ放棄することができない(民法146条)。時効完成前に放棄を認めると、債権者が債務者の窮迫に乗じてあらかじめ放棄させるおそれがあるからである。したがって、賃貸借契約締結時に消滅時効の利益をあらかじめ放棄する旨の約定をしても、その約定は法的効力を有しない。
誤り。催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は、時効の完成が猶予されるにとどまる(民法150条1項)。内容証明郵便による支払の請求は催告に当たるが、それだけでは時効は「更新」されず、催告によって完成が猶予されている間に裁判上の請求等をしなければ、更新の効力は生じない。「更新される」とする本肢は誤りであり、本問の正解である。
正しい。判例は、時効が完成した後に債務者が債務の承認をしたときは、その完成した消滅時効の援用をすることは、たとえ時効完成の事実を知らなかったときであっても、信義則に照らして許されないとしている(最大判昭41.4.20)。承認によって相手方は債務者が時効を援用しないとの期待を抱くからである。
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