先に結論
どちらに入っても、宅建業は問題なくできます。営業保証金の供託が免除される効果も、まったく同じです。制度上の優劣はありません。
違いが出るのは、お金・規模・システムの3つだけです。そしていちばん差が大きいのはお金で、しかもそれは都道府県ごとに違います。だから「全国的にこちらが得」という答えは存在しません。あなたの県の、両方の金額を見るしかありません。
全国の約8割
(全宅連に次ぐ2番手)
業界最古
by ITANDI BB
意外に思われるかもしれませんが、業界最古は全日です。全日の創立は1952年10月1日、全宅連の設立は1967年9月29日。「大きいほうが古い」わけではありません。
同じところ ── 分担金60万円は変わりません
まず押さえておきたいのは、どちらを選んでも変わらない部分です。ここを勘違いすると比較を誤ります。
| 項目 | ハトマーク | ウサギ |
|---|---|---|
| 弁済業務保証金分担金 | 主たる事務所60万円/従たる事務所30万円(法律で決まっているので同額) | |
| 営業保証金1,000万円の供託 | どちらも免除されます | |
| 法的な位置づけ | どちらも国土交通大臣が指定した保証協会 | |
| 取引の相手方の保護 | 還付を受けられる範囲は同じ | |
| 研修・法定研修 | どちらも実施(宅建業法64条の6) | |
| 無料の相談窓口 | どちらも設置(弁護士・税務など) | |
分担金60万円は宅建業法64条の9第1項と施行令7条で定まっているので、団体が値引きすることはできません。「入会金が安い=保証が薄い」ということもありません。
お金で比べる ── ここが一番違う
各協会の公式サイトで確認した実額です。分担金60万円を除いた、入会金・初年度会費などの合計を並べました。
| 協会 | 入会金など | 内訳 |
|---|---|---|
| 東京ウサギ | 372,000円 | 4団体の入会金・会費からパッケージ減額36万を控除(2024年6月時点) |
| 北海道ハトマーク | 672,800円 | 入会金40万+保証協会20万+年会費64,000+講座8,800 |
| 神奈川ハトマーク | 772,000円 | 入会金60万+保証協会10万+年会費72,000(2026年10月31日までの減額中。通常は約107万円) |
| 大阪ハトマーク | 868,800円 | 入会金60万+保証協会20万+年会費60,000+講座8,800 |
読み取れることが3つあります。
同じハトマークでも、都道府県で倍近く違います。宅建協会の入会金だけで、北海道40万・大阪60万・神奈川80万(通常時)。全国一律ではありません。
保証協会の入会金にも差があります。全宅保証は20万円、全日の不動産保証協会は8万円でした。ただしこれは調べた範囲での話です。
キャンペーンが動いています。神奈川は2026年10月31日まで減額中で、通常107万円が77万円。時期によって数十万円変わるので、入会の直前に必ず確認してください。
ただし、東京の全日が安いからといって「全日が安い」とは言えません。比べたのは4件だけで、しかも県が違います。同じ県で両方を比べたわけではないので、これは「幅がこれだけある」という事実であって、団体間の優劣ではありません。あなたの県の宅建協会と全日地方本部、両方に見積もりを取ってください。それが唯一の正解です。
規模で比べる
全宅連は公式サイトで「宅建協会傘下の会員業者数は約10万事業者で、全国の不動産業者の約80%が会員」と公表しています。全日は、公式サイトに会員数の数字の記載が見当たりませんでした(会員数の推移を示すグラフは掲載されています)。したがって全宅連が最大、全日が2番手という関係になります。
規模が効く場面・効かない場面
効く場面。会員間の物件情報の流通、地域の交流会や勉強会、そして消費者側のマーク認知。ハトマークは街の不動産店の看板として広く知られています。
効かない場面。物件情報の要であるレインズは、どちらの会員でも使えます。レインズは国土交通大臣が指定した指定流通機構であって、業界団体のシステムではないからです。「大きいほうに入らないと物件が回ってこない」ということはありません。
入会の窓口が違います。全宅連は47都道府県の宅建協会の連合体なので、入るのは都道府県の宅建協会です(そして全宅保証に入るには、その宅建協会の会員であることが要件になります)。全日は都道府県の地方本部に入ります。どちらも「全国組織に直接入る」わけではないので、実際に付き合うのは地元の組織です。地域の支部の雰囲気は、入ってから効いてきます。可能なら見学や問い合わせをしてみてください。
システムで比べる
会員向けの中身は会員限定サイトの中にあるため、ここでは各団体が公開ページで説明している範囲で整理します。
| 用途 | ハトマーク | ウサギ |
|---|---|---|
| 会員ポータル | ハトサポ | ラビーネット ポータル 「協会独自の会員支援サイト」 |
| 物件情報の流通 | ハトサポBB 「宅建協会会員だけの新流通システム。不動産業務を一気通貫でサポート」 | ラビーネットBB by ITANDI BB 物件登録・検索システム。イタンジ株式会社がサービス提供。レインズやSUUMOへの連携が可能 |
| 電子契約 | ハトサポサイン 「安い!簡単!安心!」全宅連が提供 | オプション扱い 電子契約システムは、入居者管理などと並ぶ追加サービスとして案内されています |
| 書式作成 | ハトサポWeb書式作成システム 自動連動・呼出し機能。ワード/エクセル書式も配布 | 契約書類作成システム |
| 研修 | Web研修(無料閲覧) | 全日ステップアップトレーニング(eラーニング) |
| 相談 | 弁護士法律相談・契約書式相談・税務相談 | 相談員による電話相談、地方本部での対面相談、全国一斉無料相談会(年1回・10月1日) |
| 提携サービス | 80種類を超える商品・サービス | 提携サービスあり |
| 消費者向けサイト | ハトマークサイト | ラビーネット不動産 |
どちらも流通システム・電子契約・書式・研修・相談という骨格は同じです。ただ、公開情報を並べると思想の違いが見えます。
自前でつくるか、外から借りるか
全宅連は自前路線です。ハトサポBB、ハトサポサイン、ハトサポWeb書式作成システムと、いずれも全宅連が提供するものとして案内されています。電子契約も「全宅連が提供する電子契約システム」と明記されています。
全日は外部を起用しています。物件登録・検索の中核である「ラビーネットBB」はby ITANDI BBと名乗っており、イタンジ株式会社がサービスを提供しています。公式ページには「使いやすさNo.1の不動産業者間サイトを起用」とあり、レインズやSUUMOへの連携も可能と書かれています。
そしてもう1点。全日の電子契約システムは、入居者管理などと並ぶ「オプション」として案内されています。ハトサポサインが会員向けの目玉として前面に出ているのとは、位置づけが違います。電子契約を主力に据えたいなら、ここは確認しておくべき差です(費用や条件も含めて)。
どちらが良いという話ではありません。自前なら業界特化で作り込める一方、外部起用なら既に多くの業者が使っているシステムに乗れます。結局は使い勝手ですが、それは触ってみないと分かりません。入会前にデモや説明を受けられないか、聞いてみる価値はあります。
では、どう決めるか
費用も機能も、決定打にはなりません。正直に申し上げると、多くの人にとっては「どちらでも大差ない」というのが実態です。そのうえで、判断の軸を挙げるとすればこうなります。
初期費用を1円でも抑えたいなら
両方から見積もりを取って、安いほうにする。それだけです。数十万円の差は、開業直後の資金繰りには効きます。キャンペーンの有無も必ず確認してください。
地域のつながりを作りたいなら
その地域で会員が多いほう、あるいは支部の活動が活発なほう。紹介や情報が回ってくるかどうかは、結局は人です。全国シェアより、あなたの市区町村の実態のほうが大事です。
消費者からの見え方を重視するなら
ハトマークの認知度は高いです。ただし、それが集客にどれだけ効くかは業態によります。ネット集客が中心なら、マークの差はほとんど効きません。
迷ったときの現実的な進め方。①あなたの県の宅建協会と全日地方本部の両方に電話して、見積もりとキャンペーンの有無を聞く。②地元で開業している業者に、どちらに入っているか・支部の様子を聞く。③金額と雰囲気で決める。後から移ることもできます(ただし入会金は返ってこないので、やり直しは高くつきます)。
供託という選択肢を選ぶ人は、ほとんどいません。営業保証金1,000万円を法務局に預けたまま動かせなくなるためです。協会に入れば60万円で済みます。この差については開業費用シミュレーターで実際の金額を確かめられます。