次の記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。 (判決文) 契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはないというべきである。上記のような場合の損害賠償請求権は不法行為により発生したものである。
- 信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、買主が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効により消滅する。
- 信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、損害を被っていることを買主が知らない場合でも、売買契約から10年間行使しないときは、時効により消滅する。
- 買主に対して債権を有している売主は、当該説明義務違反が悪意による不法行為に当たる場合には、買主の損害賠償請求権を受働債権とする相殺をもって、買主に対抗することができない。
- 売主が信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった場合、買主は、売主に対して、この説明義務違反を理由に、売買契約上の債務不履行責任を追及することはできない。
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正しい。判決文は、説明義務違反による損害賠償請求権は「不法行為により発生したもの」であるとしている。不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する(民法724条1号)。
誤り。この損害賠償請求権は不法行為に基づくものであるから、損害及び加害者を知らない場合には「不法行為の時から20年間」行使しないときに時効によって消滅する(民法724条2号)。「売買契約から10年間」とする点が誤りである。10年は債権一般の消滅時効(民法166条1項2号=権利を行使することができる時から10年)の話であり、本件には当てはまらない。
正しい。悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない(民法509条1号)。売主の説明義務違反が悪意による不法行為に当たる場合には、売主はその損害賠償債務を受働債権とする相殺を買主に対抗できない。
正しい。判決文は、契約締結に先立つ信義則上の説明義務違反について、「不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはない」としている。契約締結前の段階では、まだその契約上の債務は生じていないからである。
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